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2010年02月28日

セピア色のビーナス

セピア色のビーナス 誰もいない絵画教室には 色褪せた口づけが置いてある 僕が初めて触れた女(ひと)は 白い石灰の胸をはだけ 放課後の僕を待っていた 二メートル四・三センチの女神に 背伸びしたくちづけは 冷たい肌を晒しながら 僕の唇に火をつけた 君が生きていたら プロポーズしでもしてただろうか ピグマリオン気取りの いつかの少年は 小父さんと呼ばれているのに あなたはきっと綺麗なままで 僕を呼んでいるに違いない 僕の中の少年はあの日背伸びしたまま 初恋という名のアルバムに 揺らめきながら閉じたまま 「大人」になった セピア色のビーナスを 胸に隠したまま 今は違う女神と恋をして 触れ合った やがて二人の間にニンフが生まれ 小さな女神に なぜか あなたの輪郭を鮮やかに思い出すのだ

投稿者 つるぎ れい : 21:21 | コメント (0) | トラックバック

2010年02月27日

パンドラの罠

パンドラの罠 髪の毛 手の平 唇から媚薬 まばらな光 神が死んだ約束の日 繋いだ手には錆びた鎖 君の心臓の匂いは赤い薔薇 一輪挿しに飾れば 世界は涙に濡れた 未来が邪魔になる日 背中の翼をもぎ取り 肉体の門全てに鍵を差し込む 氷点下の眼差しで 引きずり出された残酷さが 君の舌を咬みきる 溶け合う口腔の内には 血と蜜が放り込まれ 君はプランツドールから 聖母へ再生し 僕は子宮の中のミルクの海に 沈んで逝く 愛とは ともすれば アラクネの企み 雛罌粟心中 パンドラの箱は沈黙を守り 二人は「 」を奪われたまま 黄泉路を振り返ってしまった

投稿者 つるぎ れい : 19:10 | コメント (0) | トラックバック

2010年02月26日

命のリレー

命のリレー 無意識に動くものなど何もない この指にすら先祖の意志が刻まれている 生まれた意味など知らないが 何で生んだか泣きたい私 何が人生だとかわからないが 私の頭を撫でる手は たくさんあった 家族 親友 恋人 先生 それでも出会いをくれたのは 今は還暦を越え心臓病の母と肝炎を患う父 優しい子守唄 しがみついた母の手 いつが最期になるかしらない父親のバグ 忘れないよ 忘れないよ 生んでくれてありがとう なんて言えない人生だったけど お父さんとお母さんは忘れないよ 泣いた母親 見守り続けた父の背中 忘れはしない だってさ お父さんとお母さんと呼べる人は 私には二人だけ ねぇ それってとても贅沢な言葉だったんだね 両親が歌っていたのは いつだって 涙の子守唄 私は聞こえないふりして 悪態ついて逆らったけど あなたたちの命の形見 無意識に動くものなど何もない 今度泣くときも 二人の間で オギャアャア〜  オギャアャア〜

投稿者 つるぎ れい : 14:05 | コメント (0) | トラックバック

遮断

遮断 医療事務の女性が着けるマスクは 認知症患者と口を聞かないために 薬品商談の携帯電話 電波指数は地球を光の速さで 七周半 注射を打たれた子供の雄叫び 退職金で買いたい団塊世代 精神患者は速やかに隔離病棟へ    個 個 個 個    ウイルスは早めに遮断 それでも名乗る総合病院 円滑に回せ 廻せよ ロシアンルーレット 墓碑銘は霊安室に保存して庵室装え 独り部屋 慈愛と喜びの裏側で手招き笑うマネージャー の マナーなマネー 厄神さんのお隣は 観音開きの女部屋 高額医療の祭壇で雛祭りが終わる頃 私の黒髪もいつしか灰煙     シャットアウト!

投稿者 つるぎ れい : 13:33 | コメント (0) | トラックバック

たくさんの

たくさんの たくさんのロングスカートを買ったんです エイチ・ナオトの黒いスカート 私の身の丈には合わない 引き摺るだけのスカートです たくさんの巻きスカートを買ったんです 可愛いキューティーフラッシュの赤いスカート 私の歳には合わない チャイナゴスのスカートです たくさんの高価な香水を買ったんです イブ・サンローランのオピウムと シャネルのアリュール けれども阿片中毒にはなれなくて 気位の高さがシャネルの涙 黒いロングスカートは喪服のようで 鮮血を滴らせた巻きスカートは産女のようで 阿片には酔えなくて ドラッグカクテルも出来ない私 私の首は傾いたまま たくさんを見上げて安心します 宝石箱の中にはピンクゴールドの甘い静寂 パワーストーンのシルバーリングが 煌めきの力を呼び覚まし 一点物のベネチアンのブレスレットに真珠が泪 乙女の夢が眠る棺(へや) 女の薫りがする部屋で たくさんの酸素を吸わされる たくさん たくさん たくさん もうぜいたくさん たくさんが 誰かの形見になりますように たくさんが だれかの役に立ちますように 私が身体一つに纏うのは 瞑想という名の蓮の花の香水一つ オリエンタルフローラルの華に包まれて オフィーリアの狂喜を横目に見ながら 微睡み沈みゆくことでしょう 「脳手術の成功率は・・・・%です」

投稿者 つるぎ れい : 13:31 | コメント (0) | トラックバック

2010年02月24日

親愛なる王子様へ

親愛なる王子様へ 入社したての私は紺のジャケットと地味な白のブラウス 黒いタイトスカートしか持ってはいませんでした コピー機の紙詰まりにも似た安い金額明細書の苛立ちは 若さが手助けしてくださったのか 姫と呼ばれ それはそれは可愛がられたものでした 三十路というのは何か因縁を呼ぶのでしょうか 王子様がそろそろやってくるなどと考え出したりするもので メイクも一流 仕事も一流 遊びも一流 笑顔で鞭を振り振り血ィパッパ いつしか女王様と社員は呼びました せんだって昨日四十回目の誕生日を迎えましたところ 魔女と呼ばれるようになりました 皺とシミに少しばかりの白髪さえ隠せるよう 魔法も使えるようになり伸ばすは背筋ばかり この前ヒールのかかとが躓き階段を落ちそうになったところを 救いあげてくださった貴方 白い歯が眩しいイケ面敏腕青年 (見つけた貴方が私の王子様!!) と思いきや 「いい薫りですね、なにを纏われていますか?」 と いうものですから 私 「ええ、カレーシュを・・・。」 と 恥じらい即答致しましたところ 青年社員は腹を抱えてあざ笑い 「加齢臭!やっぱり魔女並みのキャリアになると言うことが違うなぁ〜。」 などとほざきやがるのです。 まあ、なんと無粋な! エルメスのリリーカレシュを事もあろうに加齢臭だなんて 無知も恥もいいところ! とっとと退社致しなさい なんて呪いをかけてしまいました 嗚呼、王子様 待てど暮らせど不便です この街の人混みをかき分けてそろそろ私を攫ってくださいまし でなければ 「屁は出てよし 鳴ってよし そこらの埃もとれてよし」 などと一発かます卒塔婆小町になりそうです あぁ 王子様 白馬の嘶きが遠うございます お慕い続けて早十数年 貴方のために初回限定 幕張メッセを御用意しております まぁ 私としたことがはしたない(笑)     早々 王子様                       般若より

投稿者 つるぎ れい : 22:53 | コメント (0) | トラックバック

2010年02月23日

散歩道

散歩道 人は死んで名を残す 鹿は死んで皮残す だからお前も何かで名を残せたらね と、母が言うから そんなことしなくても 私はお母ちゃんのこと忘れへんのに というと母は黙って泣いてしまった 二人が黙って泣いたのを知っているのはお月様 つないだ手が温かく力強いので 私は ちょっとだけ 長い二つの伸びた影に このまま死んでもええやろか なんて尋ねたくなったっけ 未だに忘れられない散歩道 母に今 そのときの握力はなくても・・・

投稿者 つるぎ れい : 23:21 | コメント (0) | トラックバック

2010年02月22日

花ざかりの下で

花ざかりの下で 春眠は薄紅色の涙を喚ぶ 誰かが泣いてるの 私には聞こえるのだけど この指先には温度はなくて この身体には命は亡くて ただ 救いあげたい想いたちが 私の周りに彩るの あなたの哀しみが 聞こえぬように瞳を閉じて あなたのさよならの次の先の 幸せを祈って 眠る桜の下 言葉と想いを花びらに変えて 今宵も チル 散る 薄紅色の恋心たち

投稿者 つるぎ れい : 21:53 | コメント (0) | トラックバック

青い闇

青い闇 青い闇 退院できるというのに なぜ月は 南天でぼやけているのか 窮屈な檻の中 眺めた月光は弱く 消灯は間近 退院できるというのに この木々を枝を揺らす 風の騒がしさはどうだ 街灯の灯を 揺さぶる胸騒ぎの雑音が 体を冷やす 退院できるというのに 夜間の救急室は ランプが消えない 一人生まれれば 一人死ぬ 誰かの大きな謀り事が 毎日企てられているのは何故だ 退院できるというのに 光 弱く 影は濃く 鼓動 鋭く 風は 冷やけき 退院できるというのに 私は ずっと 悪魔がクスリと笑って 小刀をぶら下げた 青い絵を 一生懸命 描いてしまう

投稿者 つるぎ れい : 20:26 | コメント (0) | トラックバック

2010年02月19日

忘却と消去

忘却と消去 死みたいな詩を書き綴り 自分をデリートしたい夜 闇色のロングスカートが逆さまに 嘲笑うから体は病み色 裏切りの宝石箱の思い出と 一緒に沈めオフィーリアよ 咎人が贅沢品を身に纏い惑い微睡む柩よ 永久(とわ)にさすらいたまえ 今朝は鋏 昨日は触診で弄る脳 殺人者は言う 成功率は0% 思い出に出来ない人たちばかりです だから生きたい生きたい私 さようなら そんな言葉はレテ河に 捨て去り 拾った「おはようございます」

投稿者 つるぎ れい : 08:45 | コメント (0) | トラックバック

2010年02月06日

NEKD  WOMAN

NEKD  WOMAN 出会いの始まりは メールの口説き文句 下心を読みとると 泣きたいほど愉快だった 顔の見えない王子様にでも縋り付きたかったし 永遠に淋しさと「さよなら」出来るなら 終わらない夢を白昼夢に添えられたのに 目が覚めたら 下着ごと放り出された   (私は一つの煙草の吸い殻) これが現実というやつか 慣れないことはするもんじゃないよ と 響く警笛も時の暦に流されて 思い出のリングに指を通せば まだ薬指に面影が通過するから 部屋の片隅に投げ捨てたのに 泣きながら 指輪の行方を下着姿で捜し回る/私   (私 なにやってんの?) 居場所がほしいの たった一人でさまよった街 泣いたって泣いたって この声が誰にも届かないくらい大声でないたのよ   (なのに ネオンが高笑い) 好きだったから 好きだったから なんでもできたの 涙より血を流すことの方が楽だったわ   (壊れちゃったの オモチャのウサギ) さよなら あなたが大好きだった 今は あなたが大嫌い 私は私が大嫌い そんな私が大好きで そんな私が愛したあなた   (ゲームー/オーバーな恋) 男運の悪さに泣いたとしても 私は私を止められない 嫌でも私と向き合って 嫉妬と愛をまるめこみ  生きてゆく  「女」

投稿者 つるぎ れい : 00:35 | コメント (0) | トラックバック

2010年02月03日

鬼とバレンタイン

鬼とバレンタイン 豆拾い 群がり横取り延びる手に 人の本性 「鬼は内」「鬼は内」 チョコレート どうして旦那にやる日なの 愛はないのに 愛はないのに くれてやる パンチにキック 往復ビンタ 浮気相手に甘さは不要 愛を込め 手作りチョコを プレゼント 隠し味に盛り塩二杯 くたくたの会社勤めとを知りながら お風呂でなさる それともここで

投稿者 つるぎ れい : 21:22 | コメント (0) | トラックバック

2010年02月02日

純粋と革命

純粋と革命 虚偽纏い 栄華を誇る真ん中に 誠を投げ込んだ魂の呪文 「王様は裸じゃないかー!」 「王様は裸じゃないかー!」 何度も何度でも言ってやるさ! お・う・さ・ま・は・は・だ・か・じ・ゃ・な・い・か〜! 破れたり 衣 敗れたり 権力 鏡は繰り返す 残酷なまでの大声で 勝利の名 無邪気な笑い はしゃぐ子供 群衆の観の転換 ともすれば 真実とは純粋の二つ銘ではなかったか さながら 修羅の道 選び歩み傷跡さらし 素足は 全て 国の為 皆の為 歩め殺めた 数知れず 王よ! 王冠と誇りを秤にかけよ! 群衆の謀事 革命を名乗る虐めの茨道 純粋と呼ぶならば さてはさて 裁かれるは誰ぞ!

投稿者 つるぎ れい : 16:38 | コメント (0) | トラックバック