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2012年03月09日

夢の死骸

夢の死骸


あなが
遠巻きに
私を見るようになったのは
優しさなのでしょう

勘違いの恋愛感情ほど
ややこしいものはない

あなたは
きっと移りゆく四季の中に
顕幽を旅する人

亡き人の面影を
夕陽に沈められない人

あなたの中で
幽妙可憐な女性の
手招きが映る
晩酌の春の宵

うっすらと 薫る
今宵の梅の花に
雨が刺さるのを
お赦しください

私は
蕾のまま
日陰で降り続く
春雨にうたれつづけて逝きたい

褪せた椿の花のよう首ごと
ぼとり、と土に
鎮まりましょう


褪せた夢をみてました
愚かな夢をみてました

けれど 私は…

夢に抱かれて
幸せでした

投稿者 つるぎ れい : 19:35 | コメント (0) | トラックバック

追悼短歌 「敗者の美学」へ

追悼短歌 「敗者の美学」へ


雨音が涙に聞こえる二十五時自殺したKを思い出す夜


サイレンのように夜から木霊する詩人になりたい詩人になりたい


真夜中で夢を語る忙しさ彼を殺した言葉の世界


遺言は最果タヒみたいな詩人彼の遺した敗者の美学


大詩人大舞台で対談をそんな約束忘れてしまえ


僕はもう為平さんを超えたから笑って君は空の彼方へ


死んだ詩や死んだ詩人に用はないそう言う君は今は亡き人


僕の名はまだありますかアカウント彼がまだいる現代詩フォーラム

投稿者 つるぎ れい : 19:31 | コメント (0) | トラックバック

春の泥

春の泥


あなたにはたくさん友達いるけれどあなたの目には私は不在

いいひとを演じながら雛祭り才能なければただの小娘

忙しい人だと知りつつ春の泥だから好きになりたくなかった

嫌いです裏返せば憧憬の未練の残る春の宵の香

優しさを勘違いした日溜まりの胸に一枚うすごおりある

友人が増えるごとに春の水増量オーバー流して泣かして

固いだけパンくずのよう言の葉をこぼして散らす愚痴をグチグチ

投稿者 つるぎ れい : 10:26 | コメント (0) | トラックバック

サクラサク

サクラサク


サクラサク


あなたは
新しい恋に夢中で
私は
新手の告白に戸惑って
お互いの胸に
サクラ咲く

あんなに私たち
仲が良かったのに
あんなに私たち
憎み合ったのに

徒歩では
到底行けない距離から
離れ離れになった
今頃
冬を越えた蕾たち
発芽はピンクに
電話の向こう側から
サクラサク

投稿者 つるぎ れい : 10:03 | コメント (0) | トラックバック

2012年03月02日

成婚

成婚


それは
指輪ではなく
あなたの指に噛んだ
歯形

それは
甘い囁きではなく
一生消えない
わたしが施した
刺青

それは
冷たい石でなく
熱い意志

それは
誓約書ではなく
何度も破られるべき
約束

筋書きのない蟠り
ナイフが錆びるまで
刺し続ける痛み
激しい罵倒
憤り 嘶きやまぬ暴れ馬

過去の流氷が溶け
流れ落ちる涙
そこに掛かる虹色の
未来

あなたはゆくのだ

リングに閉じ込められた
束縛を打破し
巡りゆく季節に
傷つきながら
その身ひとつで
いつか
誰かの魂に触れて
灼かれるために

(詩と思想3月号 佳作作品)

投稿者 つるぎ れい : 18:02 | コメント (0) | トラックバック

ファントム・オブ・ジ・オペラ

ファントム・オブ・ジ・オペラ


ファントム
漆黒に産まれ堕ちた
バラ色の手品師
世々にその掌から
ソプラノの女を
包み込んで凍らせ
捕われた小鳥は
モルヒネの法悦に喘ぐ
合唱の合間を滑りだす
散る 咲く
死と再生のプリマドンナたち

ファントム
仮面の下の鋭い視線
その奥に宿す鏡から
万能の幻影の乙女
現れてはきえる
非在の恋人
夜を渡る二つの影から
鮮やかな一息の混声
赤裸々に剥がされてゆく
本能の乙女

泣き 叫び
愛憎喜劇の真ん中で
あなたへ歌うオペラ
閉じた瞼から火照る涙
閉じ込めて
泣き出したかったのは
ファントム
あなた自身
結ばれることのない
名脇役

刻まれた柔らかな声帯から
届いて欲しい
光射す舞台を越えて
漆黒の淋しさに狂う
帝王(あるじ)のもとへ

ファントム
誰もあなたを
責めることは出来ない
それは夜の形
誰もが心に潜ませた
影の輪郭

投稿者 つるぎ れい : 17:52 | コメント (0) | トラックバック