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2010年09月30日
ひとつ
ひとつ
病院で
煙草をひとつ 恵んでくれないか?
と言われたので
貴方は骨折一本で?
と私は答えた
貴方が冷たい視線を
ひとつ投げ掛けたので
私は独りなのだ
と気づかされた
夏の雲がひとつもないので
ペットポトル一本買ったら
雨が降ってきた
過ぎ逝く 夏よ
奪うな ひとつを
ドライフラワーになった赤薔薇
開かれない世界地図
遠い異国の残り香に
しがみつきたくても
力なく
ベッドから
はみ出した手は
どうしても ひとつだけを
守ってしまいます
横たわる悲鳴から
枕の上にしか
棲めないため息から
瞼を閉ざし始めた世界から
欲張りな私の泉を
命の極彩
私のひとつ
ひとつだけ
投稿者 つるぎ れい : 16:02
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くゆり煙草
くゆり煙草
あなたの指先が
私を知ってから
煙草の煙りのように
濃く 薄く
私は踊り吐き出される
身体があなたを知らなければ
早く灰皿で
ちびてくたびれる
私を消していって欲しかった
煙草はくゆる
私は貴方の匂いが染みついた
古びたシャツ
いつまでも
いつまでも
くゆり
くゆり
と
貴方の薫りと指に
挟まれて
踊らされながら
炎は独り涙で消えていった
投稿者 つるぎ れい : 06:42
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紅い旋律
紅い旋律
カルメンの カスタネットの 激しさに 狂乱乱舞男はタップ
君が抱く 君が掴む 君呻く 私はベッドで孤独なダンサー
灰皿に 置きっぱなしの 煙草には 呪いのような孤独が踊る
こじ開けた唇歪に音をたて もつれたままの音は二短調
赤い靴 踊り出すのは足でなく もっと上手に 脈打つ子宮
奏でてよ 爪紅染まる旋律で 動けなくして戦慄メロディー
紅に染まった空の世紀末 君はみたかい赤い靴の子
鮮やかに 真冬に向日葵咲くように 鼓動はショパン 革命的に
投稿者 つるぎ れい : 06:29
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2010年09月28日
薔薇の憂鬱と極彩の哀しみ
薔薇の憂鬱と極彩の哀しみ
悲しくて楽しい歌は詠えません地球に独り残された夜
二人裂く 嵐の夜の苛立ちが 瞳(め)から溢れる小さな海辺
極彩色のアトリエに 今 君在らず 我の内にて閉ざされしまま
枯れた薔薇 二本差し出す君の手が 描く文字は 居たい 会いたい
誰一人出会わなければ深海で盲しいた眠れる魚になれた
強気な目 緑のドレスに紅き口 幽閉の画家 タマラ・ド・レンピッカ
別れ際 過去の栄光一編に描きたかったあなたの肖像
紅をさし 黄色い薔薇を 手折る時 花言葉憎くく 唇噛みて
朝露に 濡れた赤薔薇 引きちぎる 指に血の痕 嵐の夜明け
アイリスの芯の熱にて受粉した 絡めて薫る 濡れた指先
投稿者 つるぎ れい : 10:17
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2010年09月26日
青い鳥
青い鳥
夕闇から一条の想いが
青空にチョークで
夢の在処を配達する
昔 アスファルトに落書きした
まる
さんかく
しかく
には
足形と無邪気なままの笑い声
置いてけぼりの故郷は
空の蒼さに溶け込んだまま
鉄線が張り巡らされて
帰らず終いになってしまった
ちいさな私の青い鳥
投稿者 つるぎ れい : 22:41
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文字呪縛
文字呪縛
霞目に悩める君が傍らで眠りに入れる愛しき横顔
嘘偽りの呪縛にかかるペン先の恋なら標本の中
口角をあげて笑える女狐の夢にうなされ未来は見えず
音もなく言葉少なくうつむきてあなたは紙の上の旅人
囚われの王子に未だ聞こえざり 文字の中なる愛の呪文は
ジャン・コクトーの「偽」に関わり絡み合う下肢の二つの論ひそやかに
(改稿版)
投稿者 つるぎ れい : 22:27
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2010年09月20日
嘘で騙して黙らせて
嘘で騙して黙らせて
男性の聖人君主は一握りあとは腐れ外道かど阿呆か
男には騙されるなと母は言う経験者の苦労は黒くて
人はみな 自ずと愛を携えて掴んだままで腐らすキャッチー
優しいの裏側にある下心 三叉路 指さす標識のままに
ここは明日 詩人の墓になるらしい 中絶児の泣くサイト好評
悲しくて楽しい歌は詠えません地球に独り残された夜
大人には大人の事情があるんですお金で計算 愛の精算
何かいる だから叫ぶの怖いから猫の目みたいな黒い企み
今わたし 虚構を指で数えてる ペットボトルの水を濁らせ
投稿者 つるぎ れい : 00:31
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2010年09月18日
淨円月
淨円月
踊り疲れた御霊たち
各々の宴を語り合い
清き月に照らされて
魂の行方に酔う
月 白く
鼓動 鋭く
枝 黒く
来世浄化の
メッセージは
柔らかな光降り注ぎ
あなた方の元に
安息の月日を
召還し
忘却の岸辺へ
記憶運ぶだろう
鎮魂を謳う青い闇
空には炎の
真白き円月
淨円月
踊り疲れた御霊たち
各々の宴を語り合い
清き月に照らされて
魂の行方に酔う
月 白く
鼓動 鋭く
枝 黒く
来世浄化の
メッセージは
柔らかき光降り注ぎ
あなた方の元に
安息の月日を
召還し
忘却の岸辺へ
今日を運ぶだろう
鎮魂を謳う青い闇
空には炎の
真白き円月
投稿者 つるぎ れい : 20:48
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錯乱
錯乱
あなたを
幸せの象徴
のように思ってた
私の
真ん中に幸福な未来
私の
真ん中に満ち足りた世界
あなたの真ん中に
砂上の楼閣
あなたの真ん中に
赤いドライフラワー
描けない夢
届かない声
穏やかな虚構
二人を隔てる透明な膜
触れ合う事さえ
赦されない
かつての日常
二人の真ん中に
飾られた
空白の錯乱
投稿者 つるぎ れい : 20:40
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2010年09月16日
楽しく笑え
楽しく笑え
テレビが
とある撮影現場を放映していた
ベルニーニの彫刻から
抜け出してきたような美男子が
鍛錬された筋肉を魅せつけては
ビキニ姿の女性千人くらいに
キラキラ声を上げさせていた
颯爽と水上バイクに跨り
晴れ渡った表情を味方につけて登場した
男の太陽のように眩しい笑顔は
青い風を誘い込み
女の白い身体のラインから
甘い香が立ち上る
撃ちすさぶ波飛沫に堪えながら
トロピカルな成熟さを狙うカメラマンは
命綱で身体を斜めにして
頭を打ち付けて撮影する
裏方の青ざめた表情たち
レポーターの饒舌で快活な声は
歯を食いしばりながら
腕を上げたまま鬱血している
アシスタントディレクターの筋肉に食い込んで
既に現場の犠牲となっていた
――あぁ、一度でいいから、あんなことして脚光を浴びて楽しく笑ってみたいわぁ――
父はたいそうご機嫌で
深椅子にもたれて
水羊羹を掬い取っては口に運ぶ
私は何も言えずに
楽しく笑った
投稿者 つるぎ れい : 08:30
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2010年09月15日
私たち
私たち
滲んでは涙流れる夕暮れに過ぎゆくだけの昔の約束
君の嘘 君の溜め息 君の哀 解らないままここまできたよ
赤薔薇は二輪照らし出された私たち花言葉遠く距離も遠く
お揃いのトップスばかりを欲しがるの一生一緒の気分でいたくて
さよならに そしてはないの これきりね裏切り重ね傍にいた日々
はじめまして の次の自己紹介 私はあなたにニックネームで呼ばれてた
静寂が二時間前の君の声喪失される眠りたくない
吹き荒れる季節もあったね私たち抱き締めながら歩いていこう
夕暮れにあなたの声が聞こえたわ握り締めたの携帯電話
今からは夢の中で会いましょう朝日をみるまで泣いてるみの虫
愛してる 疲れる愛をしてきたね愛に定義はなかったはずで
投稿者 つるぎ れい : 23:42
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2010年09月14日
桔梗
桔梗
廃屋に
今年も 紫の桔梗が
二輪咲く
植えた女主人は
介護疲れで井戸の中
花弁の輪郭に
思い出をなぞると
過去の笑顔に
辿り着く
砂の城に住んでいた
光の中の男と女
夢のような時間
咲き乱れた想い
疲れはてた花は
色褪せた水中花
まだ 息をしている
植物のような貴方を残して
殺害するより
自殺した
女主人の寂れた王国に
今年も二輪の
桔梗が寄り添う
指で押すと
パチンと蕾は泣いた
叫んだように
裂けて
壊れた
投稿者 つるぎ れい : 13:34
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2010年09月13日
くれる
くれる
うなだれた向日葵のように
へそを曲げて点かない街灯
どんなに走っても
追いつけない虹の国
アスファルトの向こう側くらいには
頬を染めて待っているから
落書きのような
曖昧な恋の約束を抱いて
思い出に追いつけないまま
色褪せた
今日が暮れゆく
投稿者 つるぎ れい : 20:39
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廃墟と涙
「廃墟と涙」
彩(あざやかな)世界を見上げ叫んでる空哀しみの観覧車箱
秘密だよだれも秘密の基地だから独りの皇子にひとつの王国
みつけない見つからないの憎しみは壊れた瓶に埋もれたまま
さようなら割れた硝子を曇らせた貴方の眉間と出せない言葉
置き去りに忘れ去られた赤い椅子 主は帰らず褪せた思い出
ここなのよここにあったの学校が宅地で笑う知らない家族
図書館の本ひとつを探すならきっとあそこのチェルノブイリ
ハトロン紙かけて扱う恋人は自分の爪も透明なまま
くたびれたパイプオルガンが引き鳴らすアトランティスのレクイエム奏
投稿者 つるぎ れい : 00:47
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2010年09月12日
終焉の子守歌
終焉の子守歌
夕暮れを
暗黒の腕が掴もうとして
色彩が地平線の彼方から
あっかんべえをする
此処までおいで
傲慢と虚飾に満ちた
地球の裏側を裏返せるのは
一枚の瑠璃色の夢
切り取られた
シャッターのワガママ
こっちへおいで
遠い千夜一夜のの
子守歌を教えてあげるから
今は薄く照らされて
世界の終焉に
恋い焦がれ
泣いたらいい
投稿者 つるぎ れい : 23:44
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2010年09月07日
夜想曲
夜想曲
敷き詰められた
闇色の絨毯に
あたしは
カラダを
沈めて
涙のような
桜の花弁に
埋もれるのを
待っているの
きれいな夢が
みたいなら
ここで
造られた関節の
向こう側の
黄泉(くに)へ
壊れた魂(こころ)ごと
連れ去ってください
ナイチンゲールが
死んだ
赤い月夜
あたしは眠り続ける
渦を巻く花弁を形見に
どうか
どうか
この夢路を赦したまえ
投稿者 つるぎ れい : 03:17
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2010年09月02日
桜想
「桜想」
私は着飾る
シルクの黒いドレスと
鎖骨に煌めくガーネット
そして貴方の視線で
私は顕現する
私は慕う
この一輪の桜草を
くださった貴方に
髪を乱し
花の香に酔う
夢 夢に在らず
花 存らえど
恋 心通わず
ただ
桜草一輪に
貴方を重ね
一夜に身を委ねても
お慕い申しております
物想え
薄紅色の小さな星ぼし
私の高鳴る鼓動のままに
夏の空を駆け抜けた
淡い流星
桜星
されど消えゆく私の初恋
届かぬ雫を珠にして
貫いたのは貴方御自身
花びらの降る夜
静寂にため息
桜草を抱いて
恋に沈む
投稿者 つるぎ れい : 22:18
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2010年09月01日
渇き
渇き
鼻水と痰が
喉に流れ続け
夜中に目覚めれば
あの人は
フィラリアに侵された咳を
静寂に響かせながら
私を責める
もう一人は血統書付きのパグ犬
散歩をねだる声は掠れて
身体を横たえて
垂れ流し
犬は命が行き詰まり
金で命を量ります
餓えた涙声を聞き取ります
熱と汗に苛まれる夜から
逃れるように
食べ物を漁ると
ラッピングされた骨が
空っぽのはずの冷蔵庫から
徐々に崩れていきます
風邪薬が餌のように
見えた秘密
知っていたのは
アオミドロ色の
ペットポトル
私たち全員
仲良く死にます
お願いですから
どうか
お水を 一杯
ください
死ぬ前とその後に
投稿者 つるぎ れい : 00:51
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