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2013年03月11日

はぐれる

はぐれる


それをして楽しいですかという人に楽しいですよという寂しさ


暗闇に電球の灯りひとつだけ世界に響け携帯の指


悲しみを足しても割れぬ性格を瞳を閉じて飲む錠剤


悴んだ指先ひとつ燃える火を怒りと呼ぶな号泣と呼べ


朝が来るいつものように朝は来る起きてる夜に私は亡霊


静寂に包まれ身体はコチコチと骨を削る音(ね)時計コチコチ


うまくやれうまくやれよとよわたりをうらもおもてもあるいてわたれ


置き時計短針長針ずれてゆくそんなふうにはぐれ外され


僕の声叫んでみても憎しみが飛び出すだけの冬の空き部屋

投稿者 つるぎ れい : 22:58 | コメント (0) | トラックバック

抒情文芸 146号 春 小島ゆかり 選  佳作短歌

それをして楽しいですかというひとに楽しいですよという寂しさ


抒情文芸 146号 春小島ゆかり 選佳作短歌

投稿者 つるぎ れい : 22:52 | コメント (0) | トラックバック

携帯を濡らす

携帯を濡らす


あなたの為に携帯を濡らす
秋の力ない弱い日差しから
聞こえるあなたの
柔らかで 穏やかな声が
枝枝の葉を 全て色づけて
あとは 風に散りゆく運命を述べたから

あなたのいなかったモノクロの世界から
この世界の美しさを 文字で彩って
私に言葉に直して 声に出してくれた人よ

あなたが 時の風に連れ去られても
同じ木に寄り添った
葉たちのことを思い出して欲しい

まだ
残響するあなたの
穏やかな哀しい非命に
携帯の画面を濡らすことを
赦して欲しい

この携帯が あなたの墓標
もう だれにも
あなたを見せたくはない

わたしは 涙に濡れた
ディスプレイを閉じて

平らな器に 水を貼り
静かに 携帯の
息をとめるように 
あなたを 沈める


抒情文芸 146号 春

清水哲男 選

入選作品

投稿者 つるぎ れい : 22:48 | コメント (0) | トラックバック