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2016年11月28日

時代/足元

御神輿は
おまえは今日から御神輿様だ!
言われる腕たちに
嗤われるのを知っていますが
担がれてるように
振舞うのが
お神輿様の役目です。

      ※

御神輿様、お神輿様、
ワッショイ!ワッショイ!されながら
御神輿様のように 振舞って
自分で御神輿になれないけど、
でも、とりあえず、
ワッショイ!ワッショイ!振舞って
ワッショイ!ワッショイ!賑やかで
(もしかしたら、御輿様かも! と、
思ったら、途端に、
ワッショーーーイ!

      ※

で、
終わるだけの、宴。

投稿者 tukiyomi : 23:19 | コメント (0) | トラックバック

2016年11月22日

シュレッダー

それは恋文でしたか
長く綴られた美しい文字でも
過去形になると
住所も名前も内容も
要らなくなってしまうのですね

中古屋で買ったシュレッダーに
「アパート」という文字を半分消されて
私は居場所を失いました
一緒に写した写真も 色褪せて
一度、弾けた花は バラバラです

シュレッダーを脆い壁に嚙り付かせ
粉砕していく部屋が おもい、のか
消し済みになるはずの「部屋」の代わりに
彼が その牙を折りました

(注意書き・四分以上続けて使わないでください)
   買った当時、あなたは面白がって
   吐き捨てた紙の文字たちは
   それぞれ遺言を喋っていたのに
   あなたは耳のない子供になって
   嗤いながら なにもかも抹殺していった

(注意書き・紙屑が詰まったら一時的に逆回転で)
   逆立ちしても見えない「しあわせを」を
   嚙み砕くことが出来ずにいる オンボロ機械
   部屋の角に牙を立ててアパートを半分だけ消して
   何かに引っかかった 消耗品
   ポッカリ空いた穴から
   セピアに寄り添う私たちのクズばかりが
   舞い上がる

         ※

(壊れ物につき、取り扱い・・・、 /注意)

投稿者 tukiyomi : 18:43 | コメント (0) | トラックバック

2016年11月03日

手紙

私をあまり怒らせないでくれないか
おとなしく愛の詩集を手にするときに
透き通る言葉を考えようとするときに
人の郵便物を盗み見る者たちよ

その手紙には父の遺言が
その手紙には母の筆跡が
私宛に届く予定
封筒の鍵を抉じ開けた者たちよ
私をあまり怒らせないでくれないか

人が組織になったとき
そこに、家は無く、居場所無く、
闇雲に戦場が広がるだけ

弱者を叩き
弱者の声をねじ伏せ
弱者を更に弱者足らしめようとする
矮小な町の村長様、局長様

お偉方のあなた様方が
小娘宛の手紙一つが気になるなんて
両親の想いを踏みにじるだなんて

人の親ともあろう方々
人の親にもなろう方々
人が組織になる前に
人が組織になった時

どうか私をこれ以上
怒らせないでくれないか

投稿者 tukiyomi : 22:58 | コメント (0) | トラックバック

白猫語り

母猫が事故死して母乳の味を覚えることなく、
共に産まれた兄妹が運ばれた行方も知らず、
ただ何となく頭を撫でてくれる手を信じて、
呼びかけてくれる瞳の輝きに返事して、
春はご主人様たちとよく眠り、
夏に目覚め、秋には遊び、
冬に外の景色をじっと眺める。

そんな日々の中で、
一人いなくなり、二人いなくなり、
長生きすればするほど優しい手のひらたちの
温度が失われていくのに、
アタシだけ、白く、生き残りました。

明日、雪遊びに行きます。
白く埋もれて眠る毛のささくれた猫を見たら
踏みつぶさないで「よく頑張ったね」って、
ひとこと声を被せてください。

        ※

(独りでも天国に行けそうな気がします)


            ※ 前橋「猫フェス」用に書いたもの。

投稿者 tukiyomi : 22:13 | コメント (0) | トラックバック