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2017年10月17日

希望

「希望」が足りないね、と小さくレジで笑われた。
小銭の中には 絶望がびっしり入っていたので
安心していたのに、「希望」が足りないせいで今日
もごはんが買えない。
 てっとり早く生きるために、神社に行って拝ん
でみると、感謝箱が現れた。その中から「希望」
のようなものの匂いが立ち込めるので賽銭泥棒を
してみたが、小銭入れの中に増えたのは、罪悪感
だった。
 神主は私を見ると罪悪尽忠の凡夫だと警察に突
き出した。警察は、私の持っている小銭入れを確
かめると、ニヤニヤ笑いながら棒で殴り、黒い手
袋で口を塞いだ。
 次の日、テレビは嬉しそうに喋り続ける。
【たった今、絶望を一人、駆除致しました。】
【これで少しは「希望」が持てますね】

 その後「希望」は選挙活動を始め、拡声器片手に
スローガンを打ち立てる。
【絶望が少年少女を殺します。こんな世の中にこそ、
「希望」のひかりを!】
【「希望」、「希望」、「希望」に清き一票を!】
 レジのおばちゃんは、拍手した。神主さんは、握
手した。警察は深く敬礼し、神主さんと手をつなぐ。
「希望」がテレビの前で、神社参拝を始めると、そ
の白い手で、私の折りたたまれた感謝箱に小銭を投
げては、笑顔で鈴を響かせる。

投稿者 tukiyomi : 21:40 | コメント (0) | トラックバック