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2012年12月25日

疑惑

疑惑


真っ黒い木々の影の中をさ迷うように
真っ赤な夕立の雲間から黒い雨粒が
車窓を叩きつけるように
走りゆくバスから
移ろいゆく黒いものたちを 目の当たりにしながら
避けることも 拭うことも 取り払うことも出来ず
私は逃げるように
走り去る 風景に
黒く 追いかけられる
赤黒い夕立雲から
紫の雷が 空を裂いて
私は私を 試され 裁かれる

さっき 喋っていた友人の笑顔が
鏡にしか映らない
まるで
模写された黒い鉛筆画のように
ものひとつ 言えなくなって
額縁に入れられたままだ

どんなに
手を差し伸べても
あなたの肖像画は
届かない赤い空に引っかかったまま
私を 見下ろしている

狭い枠の中から
美しいモナリザの微笑を
裏返したような顔で
私を
白い目で 追い詰める

投稿者 つるぎ れい : 16:44 | コメント (0) | トラックバック

2012年12月06日

手紙

手紙


「私はコトバで 人ひとり壊しました
もう 誰も傷つけたくありません。」

封書された手紙から
嘘の匂いが漂って 開封後には煙にまかれた

あなたは 余所行きの横顔で
ペンをしっかり 握ったまま 離さない

今も まだ
同じコトバを 手紙に認(したた)めている

投稿者 つるぎ れい : 00:10 | コメント (0) | トラックバック

君が全てだった日

君が全てだった日


君の好きな赤ワインを買ったんだ
コルドンブルーは 
高すぎて いつかの夜に
染まってしまったけど
アルコール好きの君のために
飲めないトロを買ったんだ
クリスマスプレゼントは
ここに残しておくよ

僕はまだ
飲めないトロや
鬼ころしや
入らなくなった薔薇のリングを
並べては
居なくなった君に
渡せないプレゼントを
まだまだ 詰め込んでいる

ここに 置いておくよ
君が見つけてくれるころ

ワインは熟成されて
涙のような水に
なってしまっていても

君の好きなものだけ置いて逝く

そして 君が最も嫌った
この文字ですら

望まれないまま
塗りつぶされても

君を愛していた日々は
まだ ワインより
赤いんだ

投稿者 つるぎ れい : 00:08 | コメント (0) | トラックバック

2012年12月05日


 パチンコ屋の換金所の前で、もう何時間もひとり遊びをしている子供がいた。
 台車の棒にぶら下がったり、独り言を喋ったり・・・。
 どうやらこの子の両親は、パチンコに夢中になっているらしい。
「おばちゃん、コレ開けて。」
 ガチャガチャの機械から取り出したプラスチックの、丸いボールの蓋を開けてと言う。

「ありがとう」
 女の子は無邪気な笑顔で、再び換金所の前に座る。
 夕日は、傾きかけていた。
 ”この子の親は、どうしているのだろう・・・。”
 そんなことを考えていたとき、それを見ていた私の母が、
「あの子は、強い子になるだろう・・・。孤独ということからは強い子になる。」
と、言った。

その時、女の子の母親らしき人が、
「もう、中で遊びなさいって言ったじゃない!」
と、女の子の手を、強く引っ張る。
 その子は母親の大きなお腹を擦っては、
「赤ちゃん、赤ちゃん。」
と、言い続けた。

どうやら、母親は、妊婦らしい。
そして、換金所で働く母の話では、毎週二回、土曜日曜、女の子は換金所の前で、遊ぶ。

   【孤独から強い子になる。】

 母の一言が、頭の中でリフレインする。
 
 果たしてそうだろうか・・・?
 今度は赤ちゃんが生まれるというのに。
 赤ちゃんが産まれたたら、母親は姉になるその子の面倒までみれるだろうか。
 幼い頃の愛情不足が、大きくなって暴走しなければよいのだけれど・・・。
 その子も寂しい。私もなんだかやるせない。また、パチンコでしか満たされないその子の両親すらも。
 
 いつからこの国は、こんな孤独な社会になったのだろう。
 夕日はもう、とっくに沈んでしまったというのに。
 こぼれたパチンコ玉を見つめながら、
少女は自分にしか分からない唄を歌っている。

投稿者 つるぎ れい : 23:20 | コメント (0) | トラックバック

2012年12月04日

冬の隙間

冬の隙間


冬の隙間

スマートには
生きれません
私はいつも
泥だらけの長靴を
履いているからです

偉いことなど分かりません
指先の感覚だけが
頼りです

笑われてなんぼです
けれど
自分の笑顔には
胸を張りたいじゃないですか!

投稿者 つるぎ れい : 12:22 | コメント (0) | トラックバック

ひとつだけ

ひとつだけ


ひとつだけ

赤い花をひとつだけ

身体に隠した赤い花
ひとつだけをプレゼント

あなたのナイフで
花占いの遊びがおわっても
もとには戻らない
女の子の色
ひとつだけ

大切に契られた
私の身体の初めから終わりを
確かめながら
あなたは数える
私の忠誠心

涙を隠して
ひとつだけ

赤く咲く声
夜を裂く

ひとつだけ

投稿者 つるぎ れい : 12:18 | コメント (0) | トラックバック