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2012年12月05日


 パチンコ屋の換金所の前で、もう何時間もひとり遊びをしている子供がいた。
 台車の棒にぶら下がったり、独り言を喋ったり・・・。
 どうやらこの子の両親は、パチンコに夢中になっているらしい。
「おばちゃん、コレ開けて。」
 ガチャガチャの機械から取り出したプラスチックの、丸いボールの蓋を開けてと言う。

「ありがとう」
 女の子は無邪気な笑顔で、再び換金所の前に座る。
 夕日は、傾きかけていた。
 ”この子の親は、どうしているのだろう・・・。”
 そんなことを考えていたとき、それを見ていた私の母が、
「あの子は、強い子になるだろう・・・。孤独ということからは強い子になる。」
と、言った。

その時、女の子の母親らしき人が、
「もう、中で遊びなさいって言ったじゃない!」
と、女の子の手を、強く引っ張る。
 その子は母親の大きなお腹を擦っては、
「赤ちゃん、赤ちゃん。」
と、言い続けた。

どうやら、母親は、妊婦らしい。
そして、換金所で働く母の話では、毎週二回、土曜日曜、女の子は換金所の前で、遊ぶ。

   【孤独から強い子になる。】

 母の一言が、頭の中でリフレインする。
 
 果たしてそうだろうか・・・?
 今度は赤ちゃんが生まれるというのに。
 赤ちゃんが産まれたたら、母親は姉になるその子の面倒までみれるだろうか。
 幼い頃の愛情不足が、大きくなって暴走しなければよいのだけれど・・・。
 その子も寂しい。私もなんだかやるせない。また、パチンコでしか満たされないその子の両親すらも。
 
 いつからこの国は、こんな孤独な社会になったのだろう。
 夕日はもう、とっくに沈んでしまったというのに。
 こぼれたパチンコ玉を見つめながら、
少女は自分にしか分からない唄を歌っている。

投稿者 つるぎ れい : 2012年12月05日 23:20

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