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2019年03月06日

台所

そこには多くの家族がいて
大きな机の上に並べられた
温かいものを食べていた

それぞれが思うことを
なんとなく話して それとなく呑み込めば
喉元は 一晩中潤った

天井の蛍光灯が点滅を始めた頃
台所まで来られない人や
作ったご飯を食べられない人もでてきて
暗い所で食事をとる人が だんだん増えた

そうして皆 使っていた茶碗や
茶渋のついた湯呑を
机の上に置いたまま 先に壊れていった

カタチあるモノはいつか壊れるというけれど
いのちある人のほうが簡単にひび割れる

温かいものを求めて ひとり
夜の台所で湯を沸かす
電気ポットを点けると 青白い光に
埃をかぶった食器棚がうかびあがる

夜に積もる底冷えした何かがこみあげて
沸騰した水は泡を作ってあふれかえる

仕舞われたお茶碗と
湯気の上がることを忘れてしまった湯呑たち
その間で かろうじて
寝息を立てている老いた母と動かない猫

おいやられていくものと
おいこしていくものの狭間で
消えていった人のことなどを
あいまいに思い出せば
台所には 昔あった皿の分だけ
話題がのぼる


(抒情文芸170号・本欄推薦作品)
(清水哲男選・選評あり)

投稿者 tukiyomi : 2019年03月06日 20:43

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