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2019年02月17日

うつむきながら

うつむきながら 一番奥に座っている
うつむいたまま バスと一緒に揺れている
ノートを隠しながら ペンが走る

紺色のプリーツスカートの
大柄な女子高生が一人
堂々と見せられない一生懸命と闘いながら
文字を追い続け 文字を刻み付け
バスのハンドルが傾くたびに
膝のノートが滑り 紙が擦れる音がする

ちらちらと 周りを見て 
また バスと揺れている

文字とバスに格闘しながら 
捲られる音と白紙と
追いつけないペン

バスは田舎道を行く
くねったり上がったり下ったり傾いたりしながら
車体と同じように 私たちは揺れている

姫路から乗車してトサカグチで降りた彼女は
詩を書いていたのだろうか
詩は出来上がったのだろうか
長く続いたガタガタ道を 首を傾げた文字たちが
くねったり上がったり下がったりしながら
四角いノートの中で 真っ直ぐに立とうと 
へばりついていたのだろうか

 ✻

最後尾の誰もいないシートに
いつのまにか西日が座っている
うしろなんて振り返らない田舎のバスが
うつむく横顔を乗せたまま
耕地整理された水田の中を
飛び跳ねながら 走り続ける

(第20回白鳥省吾賞最終選考作品)

投稿者 tukiyomi : 2019年02月17日 01:36

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