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2018年12月05日

縁側

一日中縁側で過ごす人は
陽の目を見るのが少なくなった人だ

何を話すでもなく 寄る猫を追い払うでもなく
牛乳屋を見送って 小学生の登下校に目をやりながら
物干し竿がハンガーごと錆びていくのを
固まったまま じっと見つめている人だ

庭に落ちた葉を
数えるでもなく教えるでもなく
減ることにも増やすことにも関心なく
塩辛いお茶の味を
いつまでも喉に含ませている人だ

日当たりのよい縁側は
手押し車の茶色いミシンを出し 脱穀機をまわし
庭にはうろつき回る鶏を放ち 雑魚獲りで捕獲した魚を泳がす

土手の上をヒルに咬まれた男の足が通り過ぎ
手拭いを頬被りした女が 柄杓の入ったバケツをおろし
縁側の方にお辞儀する
そのあとを金色の丸いやかんを抱えた子供が
必死でついていく

土をいじり 水をまき
育ったものと実を結ばなかったものを
庭は映し出していた

内側から見えるもの
そこを通り過ぎたもの
そして運び出されて戻ってこなかったものが
庭先で遊んでいる

赦すことも手放すこともできず
墓守りのように座り続けた長い影も
陽の傾いた縁側と重なり合いながら
少しずつ 倒されていく

投稿者 tukiyomi : 2018年12月05日 21:55

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