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2016年10月27日

ヒルコ

(狼娘のお宿は何処だ
   それは夜ともなく昼ともなく 無差別に
   数多の男と交わった女の 落とし種
   種に理念なく伸びゆく手足なく目もなく耳もなく
   思いついたことを叫ぶしかない口があるだけ

(狼娘のお宿は何処だ
   男を千人切りした女の孤児なんやからな、
   あれが色情の業の姿というもんや。
   何、放っておいたら、直ぐ死ぬわ、
   あんな見た目も丸阿呆、叫ぶしかない奇形の児。
   それにな、昨日もヒルコがまた叫びよったやないか、
   【この村な、この村なァ、もうすぐしたら、なくなってしまうどぉ】

(狼娘のお宿は此処だ
   ヒルコ、なんか気持ち悪いわ、もう、殺(や)ってしまえや。
   不吉なことばっかりいいよる忌み児やし、
   村かって若いもん居らんのに、余裕かってないし、
   もう、ヒルコ、要らんやろ、役に立てへん児やし、
   わからんよう、殺(や)ってしまえや。
   ヒルコが居ること自体、村の恥よってに・・・。

(狼娘のお宿は此処だ
   せや、ヒルコは村のこと悪う言いよるでな、
   もう、見せしめや。ヒルコが居らんようになっても、
   ウチら、いっこうに、かまわんしな。
   こんなんどやろ、海の神さんの「人身御供」ちゅうんは・・・。
   それ、ええわ、ヒルコは役立つ、村の英雄で死ねるんや、
   役立たずが、役に立つ時がきたでな、じゃあコレで
   よろしゅう、頼んます

                 ※

縛られたまま海に放り投げられ、重石で沈められたヒルコの口から
何かが飛び出した、という噂も失せて、千の昼と夜が巡り終えると、
村は大津波の口から、すっぽりと腹の中へと、しまわれていった。

(狼娘は、お宿の中だ  
   

投稿者 tukiyomi : 2016年10月27日 21:16

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