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2015年05月19日

ゴッド・ハンド

手袋をした手が 器から
大量の人を掬い上げていた
その指の狭間から 夥しい人が
こぼれて落ちていった

器の底から
呻き声や悲鳴や嗚咽が聞こえても
泡がはじけるように消されていく

手は器の底から常に差し伸べられていたが
手袋をした手は そっと
器の上をラップして密封した

手袋の上に残った人の頬は赤らみはじめ
ゆっくり起き上がると
笑い合い抱き合い、お礼をいって出ていった

指は 手袋の指は
掬い上げた人数だけを毎日数え
白い紙の上に
出ていく人と泡になった関係者の捺印を
又、数えた

印、になった人たちは 紙切れになって
夜、燃やされたり ばらまかれたりして
宣伝された

手袋を嵌めた手は毎日 器から
人を掬ってはこぼし 掬ってはこぼし
持ち上げた人数だけ指折り数えた

    ( 数字だけが、行進していく
    ( 記録は、看板を作る

朝日が昇る寸前
現れた巨大な透明な両手

その手は
こぼれ落ちた人も手袋の人も
数えないで 抱き上げ掬い上げた

それらを
夢にして見せるには
数える指が いつも足りない

投稿者 tukiyomi : 2015年05月19日 22:00

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