« 爪 | メイン | 飽和する部屋 »

2014年04月23日

炎の中で産んだ子に

痛みが私を突き動かすのだ
何十本もの針から
毒が首に差し込まれ
私は自分の神経が
ピアノ線のように
弾けて途切れてゆく
音をだけを聞いていた

腐食してゆく細胞(いと)は
見えない棺に入れられたまま
燃え盛る炎に焼かれ
赤銅に生まれ変わるのだ

抉られた針の穴から
くすぶり続ける
赤い暗号たちが
火と火という記号の羅列を作り上げ
言葉を残せと責め立てる

首に貼られた血止めのテープを取り払い
首筋から溢れ出す痛みをかき集めて
私の首(もじ)を
差し出した

さぁ
赤鬼のは現れたかったか

赤い顔をして怒れる
私に似た
赤鬼を私の血肉で
虜にできたか

そして
その首(もじ)だけを
愛せるか


私と赤鬼は
断頭台で晒し者にされながら
永い間くちづけを交わす

舌を這わせ口腔に滑り込ませては
お互いの臓器を舐め回しながら食いちぎる

繋がれた舌から
夜の沈黙の中で

アーッ、あ。アーッ、あ。アーッ、アーッッ!

という
母音だけの垂れ流しが始まると
字と行間が 滴り落ちる

私は鬼の子を産むだろう
痛みの中で怒りの中で
燃え盛る炎の中で

銀の針のような視線をした
紅蓮のオーラをもつ鬼を
人々いつしか詩と呼ぶだろう

そのためだけに
私は 今日 
愛する赤鬼を
喰い殺したのだ

投稿者 tukiyomi : 2014年04月23日 22:59

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
https://www.a-happy.jp/blog/mt-tb.cgi/14054

コメント

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)