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2012年10月09日


ぬけがらになった心臓
ちからない白い腕
青白い血管が浮かぶ両の脚
広げさせ 広げさせ 広げさせ
瞳孔だけを動かす 私の裸に 指先から脚の爪先まで
少しずつ 少しずつ
細く長い針を刺す あなた

痛みを感じるまで赦さないと誓う
あなたは
私を甦らすために泣きながら針を刺し続ける

私は青白い死体の標本だ
あなたの涙で黒い髪は艶やかに濡れて
青白い血色は蛍光色となって
悲しみが哀しみを呼び覚まし
恋しさと愛しさは同化して
動脈が振動し始める

全身に刺さった棘に灼かれ
羽ばたけぬことに赦しを請い 
苦痛の理由に涙を流す

死体から無痛の淋しさと悦びを背負って
私はいつか羽ばたくだろう

あなたが「蝶」という名の理由を授けた頃
私は標本箱の中で 一瞬だけ
綺麗に羽ばたける蝶

あなたはそっとその箱を
瞳にしまう

微笑みながら
微笑みながら

投稿者 つるぎ れい : 2012年10月09日 07:59

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