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2011年12月29日

夜想

夜想


茅の外には蟋蟀がか細い音を
隅々に通わせていた
それは月光に曝された
虫の息

薄明るい十六夜
夜のかたまりが路の端へ流れながら
蒼白く行進してゆく

三叉路の標識に引っかかった
亡霊の衣擦れ
地蔵堂の扉が開いて鬼ごっこ

静かな月祭り
音も無く聞こえる笙の笛
皆を幽谷へ誘う
笙の笛

石を穿つ決意の哀しみは
黄泉路を振り返った
刹那に零した二人の
【あ】の火

無明の眠りから
何かがフッと囁いて二人の
【あ】の火が消え果てる

あるべきものが
在るべき国に還るのだ

おやすみなさい
胸の空洞から念仏が聞こえる

投稿者 つるぎ れい : 2011年12月29日 21:54

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