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2011年08月24日

煙草

煙草


沈黙ケースのホテルから
四角四面な私を取り出すと
いとも軽く持ち上げて
唾液のベッドに放り込む

真っ白な私に真っ赤な言葉で火を付けて
頑なな私の芯を解ようにくちづける
あなたが私の躰を吸う度に
痣になった蛍火が
儚い命を闇に溶かして消えて逝く

ギリギリまで私を奪うくちづけは激しく
火照る私の体温は発火し高熱を帯び
病に犯され寿命を削り取る

あなたの憎らしい執拗な戯れに
私はヤニついた毒を吐く

けれど

容赦なく私を一本一本と
征服してゆくあなたの指先が
私を狂わせ胸の炎を踊らせ
私を蝕んで愉しんでいる

あなたの咽せた咳 ひとつ
これが私の精一杯の抗い

蒸気した私の涙が紫煙となって
くゆり くゆり と立ち上る頃
あなたに愛された記憶は
夜にはぐれて薄れてゆく

思い出を全て空にして
私を簡単に捨てるあなたに
報いを授けましょう

あなたの肺は真っ黒い点描画
誰も入る隙間もない

私だけの部屋になる

投稿者 つるぎ れい : 2011年08月24日 20:13

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