« 虹 | メイン | 抱いてみたい »

2011年06月03日

空中庭園

空中庭園


用意したものは
ハルシオンと
カッターナイフと
包帯

壁には壊れた時計
床には硝子の花が咲く

お互いの手首を傷つけ
血の赤さに安堵して眠る夜
幻覚の森で落ち合って
オルゴールの棺に収まり
夜は宮殿を抜け出し
裸足でピアノの鍵盤の上を踊ったよね

君は永遠の乙女
黒いレースのついた喪服で僕を迎え
幼さの残る激しさで僕を射抜く

そのままで居られなかった苛立ちは
伸び始めた手足たち
汗ばむオスの胸板の下で杭を打たれ
僕はオンナという遺伝子組み換えの罰を受けた

男という生き物は
僕の背中に腕を伸ばすと
「コレは邪魔だな。」
と笑いながら翼をもぎ取り
僕に足枷をして繋ぎ止め
夜しか知らない生き物に作り変えた

人殺しにも似た行為を毎夜繰り返し
僕は残酷になった

もう庭園(くに)には帰れない
なのに君がくれた一輪の薔薇が
故郷(ふるさと)を恋しがるので
地獄にいても
晴れた日は空を見上げて涙が出たりする

あの二人で覚えた遊びは封じられずに
思い出が骨を砕く

帰りたい
還りたい
孵りたい

用意した物は
ハルシオンと
カッターナイフと
包帯

今から逝くよ
肉などそぎ落として
白い粉になって

透明だけが支配する
二人だけの
空中庭園(おうこく)へ

投稿者 つるぎ れい : 2011年06月03日 18:35

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
https://www.a-happy.jp/blog/mt-tb.cgi/13805

コメント

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)