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2020年06月27日

めんどり

挨拶から始まる朝は来ない
顔を見たなら悉く突き合うまで
さして時間はかからない

めんどり二羽の朝の風景
イラつく調理場
割れる玉子
割れない石頭

言い返さない方が利口
聞き流せば済むことなのに
ついに出る、
(お腹を痛めて産んだ子に!)を声高に
謳いあげて嗤う、めんどり

卵が先か鶏が先か、ではなく
どちらが先に口から産まれたか、
大声で喚いたかで勝利は決まる

私たちは似ている
親子だもの
鶏冠にくるコトバもタイミングも同じ

寡黙な台所
一触即発の玉子焼き
丸いフライパンの中でできる玉子焼きを
四角く丁寧に折りたたむことはできない

苛立ちは焼けたまま 
旦那様に差し出される

いつもの手間暇取らずの醤油をかければ
焦げていただろうフライパンの玉子焼きを
みりんと砂糖と塩で味付けすると
玉子焼きが黄色いままで焦げ付かない

旦那様は 調味料を全く使わない、
天然の玉子焼きの味が好きだという

が、

老いためんどりの目に じわり涙
その味付けは 私が母に習ったこと
人前で焦げた玉子焼きを出さないよう、
子供の頃に教えてもらった作り方

そんなくだらないことを
覚えていたくらいで泣くなよ
めんどりのくせに

私だって 作った玉子焼きの味が
わからなくなるよ
めんどりなのに


詩誌・いろんな家族(投稿作品)

投稿者 tukiyomi : 2020年06月27日 21:00

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