3月15日の夢(人形)

 今は亡きオーディオ評論家のI氏から原稿を受け取った。とても難しい内容なので、どんな写真や図版を組み合わせれば、いい誌面にできるのか迷う。 I氏自身に聞きにいくことにし、Hカメラマンの車に乗って、I氏の自宅に向かう。どうせHカメラマンは仕事がなくて暇なのだから、今日は運転手がわりだ。
 I氏の家の前には、原稿取りの編集者が沢山群がっている。彼らの混雑が一段落してから家に近づき、インターホンを探す。どうI氏に話したものか、考えてこなかったので、しばらくインターホンの前で考え込む。ようやく考えがまとまり、家人の女性を呼び出す。
 「こないだいただいた原稿、大変面白いけれど、どんな写真や図版をつければいいかわからないのです」とぼくは話す。I氏本人も出てきて、しばらく考えているが、やがて彼は女の子の人形を取り出して、ぼくに見せる。人形の髪はもじゃもじゃだ。放っておくと、こういう髪になるのが原稿の趣旨に合っているらしい。ぼくは納得し、「これは面白い。この人形をお借りしていきます」と、人形を抱いて家を出る。
 向こうからHカメラマンがやってくるが、無視して通り過ぎる。彼はびっくりして、ぼくに向かってUターンする。

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