12月16日の夢(地面の黒い穴)

 ぼくは会社をほぼリタイアしているため、ぼくの仕事を後輩の女性社員に引き継ごうとしている。渋谷での取材を彼女に同行してもらい、一緒に食事した後帰ろうとして駅に向かう。だが、彼女はさも当たり前のように地面にあいた黒い穴の中に降りようとする。細くてほとんど垂直の穴。壁は真黒で、少しねじれたような形をしている。覗き込むと、穴の下からもサラリーマンふうの男女がこちらへ登ってくる。しかたなくぼくも穴に降りる。壁には手掛かりになるものがなく、滑り落ちるような感じだ。
 穴を抜けると、そこには駅があり、懐かしい街が広がっている。いつも夢に出てくるあの街だ。ここにぼくらの会社もある。しかし、ぼくは道に迷いそうになり、すたすたと前を行く女性社員の後を急いで追いかける。
 彼女はモダンな感じのレストランにできた行列に並ぶ。入り口に一枚のガラスの壁があり、彼女は壁の向こう、ぼくは外にいる。そして、ぼくの後にもどんどん行列ができる。さっき食事したばかりなので、ぼくはまだランチを食べる気にはならない。だが、彼女は朝食抜きで出勤したから、もうお腹が減ったのだろう。その彼女が振り向いて、ぼくに問いかける。「さっきキムさんとおっしゃいましたよね。キムさんてどういう人ですか? 正式な名前を教えてください」。ぼくは懸命に頭を働かせるが、彼女にキムさんについて話したことも、キムさんという人物のことも全く思い出せない。「ごめん。あとで電話するよ」と言って、ぼくはひとり会社に帰る。
 オフィスのデスクで、もう一度キムさんのことを考えるが、やっぱり思い出すことができない。

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