4月7日の夢(命綱)

 テレビ番組の収録をしている。懐かしい音楽や映像を見て、思い出したことを出演者が語り合う番組。ぼくも出演者の一人だ。だが、ぼく以外の出演者は少しも思い出を語ろうとしない。沈黙が続いて、これでは放送事故になると思う。若いディレクターもスタジオの外へ出て行ってしまい、窓の外から「てめえら、早く思い出せ!」と汚い言葉を投げつける。
 改めて窓から外の風景を見る。水と陸地の連なりが山水画のようで、実に風光明媚だ。これは昨日の夢に出てきた景色を上から眺めているのだと思う。とても日本とは思えない風景だ。
 収録が終わり、出演者の一人の少女をタクシーで送っていく。タクシーは右にカーブしたところで停止し、あとから来た車を先に通そうとする。しかし、後続の車の殆どはこちらには曲がらず、直進して行ってしまう。最後の車だけが右折して、ぼくらの車を追い抜いて行く。少女はぼくの靴に白い紐を結び、それを自分の体に結びつけて言う。「いよいよこれが最後の命綱よ」。

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