2月8日の夢(ピアノにも出せない超低音)

 以前ぼくの編集するピアノ音楽誌で取材したアマチュアピアニストの家が高崎市にある。その熟年男性の家をぼくは訪ね、勝手知った家なので、そのまま彼の部屋に上がり込む。ピアノの横に手すりがある。その手すりを叩くと、ピアノでは出せない超低音の響きが出せるのだ。ぼくは男性がまだ帰宅していないのを幸い、その手すりを叩いて、ベートーヴェンのソナタを演奏してみる。まるで運命の響きのような、お腹の底に響く音がする。
 そこへちょうど男性が帰ってきて、その演奏を聴かれてしまった。ちょっとカッコワルイ。挨拶していると、足下がこそばゆい。見ると、男性の飼っている子猫がぼくにじゃれついているのだ。「ぼくの手を狙っているんですね」と、ぼくは言う。男性の奥さんもやってきた。窓から見える景色を指さして、彼女に「高崎って大都会ですね」と言ってみるが、彼女はぼくを無視する。

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