海生生物の標本

 高層ビルのベランダで妻に、ぼくが採集した海の生き物のコレクションをいくつも見せている。みんな細かく仕切られた大きな標本箱の中に整理されているが、まだ生きている。中には箱に入れて、その箱を紐でぐるぐる巻きにしてあるのに、箱ごとぴょんぴょん跳ねている元気なやつもいる。ぼくもさすがにその箱をあける気にならず、「これは怖いから、あけないことにしようね」と言う。妻は「私は女の子だから、こういうのはあんまり見たくないわ」と答える。ぼくは「そうだ。もう一個あるから取ってくる」と言って、室内に戻る。だが、見つからないので、エレベーターで一階まで戻る。そこはごったがえしたデパートの売場だった。その最後の一個をぼくはどうしても見つけることができない。

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