宇宙ロケットのおしっこ

 ずっと以前に会社を退職した元「P」誌編集長のKさんがいよいよ「本当にいなくなる」ことになったらしい。現編集長のぼくの席の左隣に、一日だけ彼女の席が設けられ、本当に彼女がやってきた。
 印刷所の人が二人挨拶に来社した。慌てて名刺を探すが、ぼくのデスクの引き出しに入っている名刺箱の中の名刺はみんな他人のもので、一枚も自分の名刺が残っていない。「不思議だなあ」と思い、右隣のOさんに名刺を注文してくれるよう頼む。その後で、今まで気づかなかった右の引き出しを開けると、そこにぼくの名刺があった。なあんだ。
 
 夜の道を歩いている。と、夜空を弧を描いて、黄金に輝くライオンが飛んでいく。ぼくの歩いている道を飛び越えて、塀の向こうに降りた。続いてウルトラマンが同じコースで飛んでいくが、道路を飛び越える寸前で落ちてしまい、慌てて塀を乗り越える。カッコワルイ。気がつくと、ぼくの服に草の実のようなトゲがいっぱい刺さっている。濡れたような帯状の痕もある。宇宙技術者がやってきて、ぼくに、それは「宇宙ロケットのおしっこ」といわれるものだと教えてくれる。

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