ご飯を食べようとすると、母親が「じゃんけんをして、買ったものから食べ物を選ぼう」と言う。家族みんなで何度もじゃんけんをする。最初にグーというのに似ているが、母親独特の不思議なじゃんけんである。ぼくはギョーザにそっくりの食べ物三個を手にできた。だが食べてみると、それはギョーザではなかった。
満員バスの中に老人が一人乗ってきた。誰か一人が席を立たねばならないので、乗客全員でじゃんけんをする。負けたのはさっきの母親である。だが彼女は両手に重い荷物を山ほど抱えていて、とても立てそうにない。
ご飯を食べようとすると、母親が「じゃんけんをして、買ったものから食べ物を選ぼう」と言う。家族みんなで何度もじゃんけんをする。最初にグーというのに似ているが、母親独特の不思議なじゃんけんである。ぼくはギョーザにそっくりの食べ物三個を手にできた。だが食べてみると、それはギョーザではなかった。
満員バスの中に老人が一人乗ってきた。誰か一人が席を立たねばならないので、乗客全員でじゃんけんをする。負けたのはさっきの母親である。だが彼女は両手に重い荷物を山ほど抱えていて、とても立てそうにない。
地方都市でぼくの講演会が行われることになったので、早めに会場入りする。そこはデパートらしい。芸術的な迷路のようにエスカレーターが広大な空間を縦横無尽に走っている。男子トイレが見えたので、今のうちに用を足そうと思う。だが無限大記号のような形をしたエスカレーターは何度試みてもそのそばを通過するばかりで、トイレに行きつくことがない。 やっと会場らしい場所に着いたが、狭い部屋に粗末な木製の椅子とテーブルが並べられているばかりで、講演とは無関係らしい客もてんでに座っている。こんなところで話ができるのだろうか。
ある組織の運営委員会が地方都市で開かれるので飛行機で出かけてみると、会場にはまだぼくしかいない。事務局の担当者の荷物だけがカーペットに置かれているので、中を覗いてみる。ぼくについてのデータがあるはずだと思うが見つからない。担当者が戻ってきた。とても毛むくじゃらな男性なのでびっくりする。彼は「他の担当者たちが職務を軽視して誰も来ない」ことを慨嘆する。だが彼が会議のために用意してくれた食事メニューはあまりにも高価すぎる。どっちもどっちだと思う。
ワクチン接種に出かけた。順番を待つ間、ぼくはワクチンの批判をし続ける。そのせいだろうか。いつまで経ってもぼくの名が呼ばれない。白衣の男がやってきて、ぼくに嘲弄的に書類を投げつける。ぼくは片腕がないのでそれに抵抗できない。おまけに障がい者たちを接種のスタッフにしているので、ハラスメントになるから彼らに反抗するのは難しい。ぼくはとうとう一番最後に回されたようだ。
体中が痒い。痒さは三重になっていて、三番目の痒みが一番ひどい。外は灰色の雨が降っている。新しく引っ越した瓦屋根の家は古くて、さびれた駅に隣接している。用を足そうと線路の上に出るが、列車が来たら轢かれてしまうと思い、家に戻る。
「三月の甘納豆」の句で有名な俳人T氏の出版記念会に妻といっしょに出席する。会場には彼の作品がパネルで沢山飾られている。突然司会者が「会場に飾られた作品の中から三つのフレーズを使って、新しい俳句を皆さんに作っていただきます。そちらの列から順番に発表してください」とアナウンスする。そんなプログラムだったのかとぼくは驚くが、妻はあらかじめ知っていたらしく動じない。ぼくは大慌てで会場の作品を見て回り、自分の心情にふさわしい言葉を拾い出そうとする。そんなぼくを見て司会者は「男性の出席者の中にはご存じなかった方もいるようなので、今からしばらく選句の時間を設けます」と言う。ぼくは救われた気がするものの、パニックになって会場の外の廊下にまで作品を見に行くが、どうしても適当なフレーズが見つからない。だがそんなことをしているうちに、次第に選句のことを忘れ、会場の風景に面白いシャッターチャンスを感じて、撮影に夢中になってしまう。
マンションの一室にある会社に面接に行く。ぼくのほか数人の若者が受験に来ている。若い社長夫婦は「忙しいから一人に一問ずつ質問するね。あとはきみたちで適当にやっておいて」と言い置いて、ばたばたと出て行った。しかたなく受験生の一人であるぼくが残りの面接官を務める。
すべての面接が終わり、あとにぼく一人だけが残った。ぼく自身の面接はどうすればいいのか。まあ省略すればいいかなと、オフィスでのんびりしていると、いきなり玄関が開いて初老の夫婦が現れた。「どうだね、うまくやっているかね」と声をかけてきた彼らは、さっきの若社長の両親だという。慌ててぼくは立ちあがり、「えー、はい、どうも……」とへどもどする。二人は「まあいいか、カメラの映像を見ればいいよな」と言い合っている。しまった。この一部始終はすべて監視カメラに映されていたのだと気づく。
ぼくは荒れる学校として有名な高校の担任教師である。始業の日からしばらく休んでいたので、今日が今年初めての登校日となる。自分の担任する教室がどこにあるのかさえ分からない状況だ。ともかく職員室へ行く。生徒が生徒なので教師たちも荒くれ者が多いが、一番人のよさそうな男性教師を見つけて、ぼくの教室のありかを尋ねると、彼は一枚の地図を見せてくれた。教頭たちも出てきて、ぼくにその場所を説明してくれる。
聞かなくても分かっている。それはこの治安の悪い街でも最も恐れられている場所である。頭の中でさっきの地図を反芻しながら街路をたどる。荒廃した商店街を歩いていくと、そこはコミケのような腐女子たちの集まる場所である。そこに女王のように君臨しているのは、もちろん有名女性詩人のKだ。まずはKを探して、その協力を得ることが早道だろう。だがKは見つからず、かわりに映画館の前で、ある映画作家の特集チケットを二割引きで買おうとしている、詩人会の元会長G氏に出会う。
だが、まさにその瞬間だった。向こうからやってくるのはぼくが探し求めていたあの人だ。逆光に浮かび上がるその人は男性にも女性にも見える。その人を無事に送り届けることがぼくの任務だ。ぼくたちはこの街のヤクザの組長がさしむけたリムジンに体を低くして隠れる。今この瞬間にも敵に体中を蜂の巣にされるかもしれない。だが、ぼくらは無事に目的地にその人を送り届けることができた。迎えの男が近づいてくる。その人も一言も口をきくことなく、後ろを振り返ることもなく建物の中に消えていった。
さあ、任務が終わったから、家に帰ろう。ぼくの目の前に二つの駅がある。どちらも見たこともない駅だ。一つは地下の駅で、もう一つは高架の駅だ。家に帰れるのはそのどちらの駅だろうか? ぼくは魅入られたように高架駅の方に近づいていく。
新しく引っ越したマンションは部屋の仕切りがカーテンのような白い布地だ。カーテンの外は共同の廊下で、そこから住人たちが下を覗いている。眼下は大きな川でそこを石像のようにも見える巨大な象などの野生動物が沢山ゆっくりと動いている。
自室に戻ると部屋を間違えたらしい中年の男性が我が家に迷い込んでいる。慌てて外へ出ようとする男性に「いいですよ、いいですよ」と鷹揚に声をかける。
フランスへ団体旅行して街路を歩いている。うつむいて考え事をしていて、ふと前を向くと一緒に歩いていたはずの仲間がいない。うんと先へ行ってしまったのか、それとも街路をわたって反対側に行ったのか、うろうろ視線をさまよわせるが見つからない。
泊っているのは旅館である。自室は二階だが、そこへ行くためには一階の窓枠に立ち、二階の屋根に飛び移らなければならない。かなり難しいなと考え込んでいると、後ろから「もっと楽な道があるよ」と声をかけられる。
それなら楽な道を行こうと、廊下の向こうの襖を開ける。すると、そこは大奥のトイレで、広い部屋いっぱいにふかふかの羽毛布団が敷かれている。着物の女性たちの姿も何人か見える。だが布団をめくると、たっぷり汚水をたくわえたプールのように大きな便器が現れる。
「こっちこっち……」と詩人のN氏がぼくを呼んでいるので、彼の指さす部屋を見る。コンパクトなベッドの向こうにさまざまな精密機械が置かれたモダンな部屋だ。素敵だと思うが、そこをぼくに貸してくれるわけではなさそうだ。
日本に帰ってきて新幹線に乗る。ヤクを常習している指名手配の女性がこの列車に同乗しているらしい。ホームに降りると、背後からバタバタと大勢の足音が近づき、わーわーという喚声も聞こえる。例の女性がいよいよ逮捕されるのだろう。
ぼくの勤めている会社の取引先の銀行で事件が起きた。ぼくはまだ新入社員だが応援要員として駆け付ける。とりあえず用はないので、他の若手社員とともにロビーでにこやかに立っている。自分では組織の一員として役立っているつもりだったが、銀行の役員がやってきて、ぼくに厳しい顔つきで宣告する。「あなたは裸足でおまけに足が臭い。カバンに入れている弁当が臭うのも問題だ。ここにいてほしくないので、すぐに立ち去りなさい」。確かにぼくは靴下をはいていないし、母親の作ってくれた弁当箱を持っている。「わかりました」と素直にロビーを出る。
外は雨が降っている。空腹感を覚え、隣のデパートに入る。二階のフロア全体が大きなパン屋である。だがぼくはトレイではなく、小さな皿に自分の食べたいパンを山のように積み上げる。手で押さえないとこぼれてしまいそうだが、なんとか出口までたどりつく。だがそこにレジはなく、隣のフロアで自由に食べてよいらしい。