自分の職場であるピアノ音楽誌編集部のデスク。ピアノの先生への特殊詐欺が最近多発しており、それに使われないよう、ぼくは詩人名簿を机の下に厳重にしまい込む。手口としては「詩人のA氏が作った楽曲が琴や三味線など和楽器で演奏するのに適しているので、ぜひあなたに演奏してほしい。ついては著作権料をあなたの方で負担してほしい」と騙して振り込ませるというものだ。
ぼくの向かい側にそのA氏が座っていて、「そんな詐欺にみんな簡単に引っかかるものかね」と疑わしそうに言う。ぼくは「この名簿にも数百人はいると思う。でも、ぼく自身を含めて、みんな2年もすると引っ越してしまう人が多いから、名簿はすぐ役に立たなくなってしまうんだけどね」と答える。