夜、クライアントを訪ねて、スタジオに行く。すると「ここに残って私たちの仲間にならないか」と声をかけられ、そのままレコーディング・スタッフの一員となる。そこは三階建てのビル全体がスタジオになっていて、有名なミュージシャンの姿も見える。
一階と二階の間は螺旋階段になっていて、ステップの隙間から階下が覗ける。ステップには何冊もの本が置かれていたが、ぼくはそれに気づかず、隙間から本を落としてしまった。階下から女性の「きゃーっ!」という悲鳴が上がる。幸い、階下にいた男性が「ごめんなさい。ぼくが本をそんなところに置きっぱなしにしたからだ」と言ってくれたので、ぼくは責任を問われずに済んだ。芸能界は先輩後輩の関係が厳しい。一番後輩であるぼくは何かと厳しい立場にあり、危ういところだったなと胸を撫でおろす。レコーディングはそのまま夜を徹して未明まで続いた。私たちの働くビルはまるで大きな豪華客船のように輝いて見える。