3月24日の夢(名刺がない)

 ぼくはP誌の編集長だ。今日は入社したばかりの新米記者を連れて、Y社主催の音楽イベントに取材に行く。最初に個人宅を訪ねる。草の生えてない土の地面に建っている家だ。玄関の硝子戸の中に、女性が一人佇んでいる。「ごめんください」と開けて入ると、最初は女性の一人暮らしと思ったのに、入れ替わり立ち替わり若いのや年取ったのや、さまざまな女性が一人ずつ地下室から現れる。
 イベント会場に着く。広間の真ん中に四角いテーブルがあり、それを囲んで出演者と観客が一緒に座っている。ミュージカルのステージに観客もそのまま参加するのだ。新しい面白い企画のイベントだと思う。
 ぼくはそれを別室から開いたドア越しに取材している。イベントが終わり、Y社の担当者に取材しようと待ち構える。だが、新米女性記者はさっさと帰ってしまった。しまった。観客の感想のコメントをニ、三人から取らせるべきだったと悔やむ。担当者は沢山の洋服や端切れの山をぼくの前に置く。説明を始めるが、同僚が呼びに来たので、「ちょっと待ってて」と言ったまま、会場に戻ってしまう。
 その間にも取材していた部屋はスタッフたちがどんどん片付けていき、洋服と端切れの山も勝手にあちこち移動させられる。最初はこれらはぼくが貰えるのかと喜んだが、どうやら撮影してくれということらしい。やっと担当者が戻ってきて、それらを段ボールの箱に入れる。だが、段ボールの中には水が入っていて、たちまちそれらは汚水でよごされてしまう。ぼくは担当者に「名刺をください」と言い、名刺を受け取る。しかし、ぼくのポケットから出した沢山の名刺は全部他人から貰ったもので、ぼく自身の名刺は一枚もない。しかたなく「今度お会いしたとき、差し上げます」と詫びを言う。
 そろそろ退出しようと思っていると、別のY社のスタッフがドアの外から「アナウンサーの〇〇はいますか」と大声で尋ねてくる。「ぼくは他社の人間なので、わかりません」と返事をする。
 時計を見ると、夜の十時半過ぎだ。これでは家に帰るにはタクシーに乗るしかない。ここは品川なので、通りを右に行けばタクシー乗り場があるはずだ。外に出ると暗い中を急な石段が下へ続いており、年寄りが数人歩いている。どこかの山寺の山門のような感じだ。石段を下りると、広い通りだ。視界がばっと開ける。快晴の青空のもと、一面の緑の田園地帯が地平線まで広がっている。左は多少市街地があるが、右には人家も少ない。さっきまで深夜だったのに、白昼である。右にいくら歩いてもタクシー乗り場などない。舗装された広い道路を車がスピードを出して行き交っている。ここからどうやって家に帰ればよいのだろう?

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