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2013年01月17日

電子ブック漂流記 12)

電子ブックの "縦書き" 実現にハシャいでいたらトタンに大雪を浴びせられてしまった。
今回の芥川賞。受賞者は黒田夏子さんという75歳の方で、年齢もさることながら、受賞作の「abさんご」が、"ヨコ書き" で平仮名を多用した斬新な作品であることが話題になっている。
この際、素直に考え直してみることにした。

作品の良し悪しが縦書き、ヨコ書きで決まるわけもないと思う。読みやすさ、見やすさの観点からとりわけ電子ブックの表示のありようを探ってきた結果の "縦書き" 重視。それにこだわった私。黒田さんはそのような観点をハナから不承知だ。「小説らしい小説は目指さない」「一見して読みにくい作風」、その姿勢を貫いている。これにはご自身固有の言語体験が理由になっているということだが、そのあたり日本語という言語に対する独自の執着と深い造詣が窺える。

つい先日の大雪の日、「詩と思想」誌の新人賞贈呈式の席でも、これと似通った出来事に遭遇した。授賞者の作品は、プリントされた写しこそ「縦書き」で表記されていたが、漢字混じりの平仮名を主体にやまとことばを駆使した詩情はいかにも先祖帰りの印象を受けた。受賞者は永方ユカさんという若い方だ。

期せずして平仮名あるいはやまとことば仕様がヨコ書き、縦書きでネジレながらもひとつの潮流のように現われた。世代を超えた女性の手で。これはどういうことだろう。
常識的にはやまとことばにせよ平仮名にせよ古来縦書き表記が自然だったはずだ。が、黒田さんの信念はそこにはない。永方さんの詩情はそこにある。縦書きヨコ書き問題の根は深い。漂流記はまだまだ続く。

投稿者 oqx1 : 2013年01月17日 22:52

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