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2016年01月21日

ブルーオキナワ 7)

 ブルーオキナワが続かない。書きたいことは山ほどあるのにどう書いたら何を伝えられるのかぼんやり考えていた。そんなぼんやりを年明けに持ち越してしまっていたところ、先日1月11日、成人の日、土曜美術社出版販売主催の新年会を兼ねた『詩と思想』新人賞受賞式に出席した。今回は撮影スタッフとしてだ。

 奇しくもだった。沖縄をテーマにして新人賞を受賞した青木由弥子さんの『わたつみ』という詩の朗読に間近でビデオを回しながら対面した。そのときなにか腑に落ちたような気がした。そうだ、沖縄を語るにはこんなふうに詩のようなカタチでしか語れないのかもしれない、と。
 前の戦争の被害者でもあるが一級の加害者(対大陸をはじめ)でもあったわたしらヤマトンチュ、ただただその被害者となるしかなかったウチナンチュ、遠い歴史を辿ってもだ。海溝は深いのだった。


「わたつみ」 青木由弥子
   第24回『詩と思想』新人賞受賞

とよとよとよ るゐるゐ とぷん
とよとよとよ るゐるゐ とぷん
沖縄の内海には濁音がない

ひとところにつもりゆく白い骨
のような珊瑚
一度は生きていたものが
この島を太らせていく

空と海のあわせめを
目の奥に引き寄せる
海からぞくぞくとあがってくる白い影
陽に照らされて泡にくだけ
波打ち際に打ち寄せる

押し寄せる声は
濁音に紛れ乱され

とよとよとよ るゐるゐ とぷん
とよとよとよ るゐるゐ とぷん
耳をすませれば皮膚が消え輪郭が消え
静けさに手渡されていく体も消えて
わたしの芯にせりあがる波

 ずぶりと砂地に差し入れられた
 アダンの気根
 太い肌に触れれば熱を持って熱い
 大地をつかみとる強さで
 奥底からこみあげるものを吸い上げる

 琉球松の葉は
 太陽(ティーダ)のゆぴが編みあげた組み紐
 黒松のように掌を刺すことがない
 顔の無い塊りの風を押し返し跳ね返し
 触れれぱやわらかに指になじむ

 焼夷弾に燃え尽きたアカギの大木
 根を割って伸ぴた新しい木が
 押し開いてうねりのぴて
 引き裂かれた傷からあふれだすみどり

とよとよとよ るゐるゐ とぷん
とよとよとよ るゐるゐ とぷん
空が傾いて押し寄せてくる
胸を裂いたような赤に呑まれ
ひた寄せる波音を聞いている

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つづく

投稿者 oqx1 : 2016年01月21日 02:58

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