ランチをとろうと会社を出て、地下鉄の明治神宮駅の階段を降りる。ここから千代田線で一駅、表参道駅まで乗るつもりである。ホームを歩いていると「やあ、Hくん」という声がするので、そちらを振り向く。ホームには一人掛けの椅子が何列も置かれていて、その一つに詩人のHが腰かけ、声の主に顔を向けて挨拶している。彼とは旧知の仲だが、どうせぼくと同じ詩の集まりに行くところだろう。それなら同じ電車に乗るはずだから、そこで挨拶すればいいと、素知らぬ顔をして通り過ぎる。
待っていた列車が到着した。だがやってきたのはたった一両編成の地下鉄だった。しかも隣の表参道まで一駅だけしか走らないという。そういえば駅のトンネルはなんだかうす暗く、裸電球や裸の電線がむきだしになっている。
乗り込んでみたが、不思議なことにHを含め、見知った詩人は誰も乗っていない。ただ、神宮前のホームで見かけた青い服の中年女性が乗ってきただけだ。自分がHよりも年上なのにまだフルタイムで働いていることに強烈な不満と違和感を覚える。