12月31日の夢(母が迎えに)

 泊まりの出張帰りで、家に寄れないまま、現代詩人会の集まりに出かける。会場は美容院だ。グランドピアノが置いてあるので、腕で倚りかかると、鍵盤が一つ上にめくれあがっていることに気づく。こんなピアノで弾けるだろうかと思い、めくれ上がった鍵盤を下に押し込もうとすると、ポキンと折れて、壊れてしまった。集まりにやってきたのは、病気で妻を亡くしたA氏と、とうに故人のはずのK氏など、ごく僅かだ。打ち合わせの後、ぼくは早く帰宅したいのに、彼らは「これから飲みに行こう」と誘う。「お金はどうするの?」と尋ねると、会計担当のA.S.氏がちょうどやってきた。ふと見ると、美容院の待合室の壁際にひっそりと、十数年前亡くなったぼくの母親がにこにこと座っている。ぼくを迎えに来てくれたのだ。これで家に帰れると思う。奥にはベッドがあり、癌で闘病中のO氏が寝ている。半身を起こして、ぼくと言葉を交わすが、とても体調が悪そうだ。飲みにいく詩人たちを都電の停留所に送っていき、彼らと別れを告げる。高台に来て、ふと気づくと、母の姿がない。はぐれてしまったようだ。左には地下へ続く穴のような、メトロの入り口が口を開けている。右にはさっき出てきた美容院の出口がある。そのどこにも母の姿はない。ぼくはただ一人、地上に取り残されてしまう。

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