4月5日の夢(しゃべるお面)

 自宅の二階へ上がる。仏壇のような場所に飾られている赤い風車のようにも見えるお面が突然ぶつぶつと喋り出す。以前何げなく拾ってきて置いておいたものだ。怪しいので引っ掴むと、階段を降りて外に走り出て、水溜まりの中に突っ込み、さらに上から靴で踏みつける。しばらく靴の下で抵抗していたが、間もなく水中にくったりと沈んだ。見回すと、あたりは戦後の頃のような舗装されていない地面で、向かい側の崖の上は鉄道の工事中だ。ヘルメットをかぶった工夫たちの姿が出たり入ったりしている。

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4月2日の夢(黒い兄さん)

 引っ越しした二階建ての家に義母と妻と三人で暮らしている。夕方なのか部屋の中は暗くてよく見えない。「兄さんが来てくれた」という声がする。よく見ると、黒い影のような男性が下着のまま畳の上に似ている。三人のうち誰の兄なのか分からない。とにかく暗いので電球を買ってくると言って、義母に「電気屋はどこですか」と尋ねる。「義母も引っ越して間もないのでわからない」と言うが、街に出ればわかるだろうと高を括る。

 しかし実際に出てみると、外は石材をばらまいたような、あるいは巨大な石段でできたような場所で、歩くことさえ難儀である。おまけに雨も降ってきた。

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4月1日の夢(窃盗犯になる)

★たまたまエイプリルフールに見た夢ですが、いつも通り全編夢見たままに記述しています。

 ふと気の向くままに、夜の街に散歩に出る。いつものバス停に来た。並木の美しい舗道に光り輝くバス停のサインポールが立っている。片側の青く輝く面はタッチパネルで、そこに書かれたいくつかの文字に指でタッチすると、自分の行く先などに自由に変換できるはずだが、今夜に限ってうまくいかない。戸惑っていると、背の高い別の男性がやってきて、「ねえ、おかしいですよね」と声をかけてくる。

 バスに乗って、郊外まで行き、また元のバス停に戻ろうとする。だが、バスに乗って気づいた。まだ引っ越したばかりで、あのバス停はなんという名前だったろう? リアウィンドウごしに夜空にそびえる富士山が見える。富士のいただきから竜巻の形の雲が渦巻き出ていて、なにか不穏な様子だ。夜空は白い巻雲で泡立つようで、上空には小さな月が一面に出ている。その沢山の月が風にあおられてくるくると群舞しており、なかなかに美しい情景だ。

 はっと気づくと、ぼくは座席で猫のように丸まって眠りこけていた。一つの座席にぼくを含めて三人の乗客が座っている。よくそんな眠り方ができたものだ。「次は九段下」というアナウンスが流れる。そうだ。ぼくの降りるのはここだった、と思う。急いで前部の運転席に行くが、そこには計器が並んでいるだけで、運転手がいない。慌てて後部へ行くと、そこにはスキャナーを設置して警官が待機している。交通系ICカードをスキャナーにかけると「こぶくろのK」という持ち主の名前が画面に浮かび上がる。しまった。これは昔、公園に落ちていたのを拾ったものだった。眼鏡をかけた若い警官が「あなたはこの人じゃないですよね」と勝ち誇った笑みで言う。「こんな軽微な罪でなく、巨悪を摘発するのが警察の役目でしょう」と言ってみるが、警官はせせら笑うだけだ。家で待つ妻にせめて携帯で連絡しようとするが、電話もかけられないよう圏外表示になってしまった。

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3月30日の夢(木の床の広場)

 会社の周りは木製の床材が敷き詰められた広場である。箒を持ち、広場を一周してみようとするが、奥の壁際に髭面の若いアメリカ人男性の姿が見えるので、途中で戻ることにする。

 会社の入り口で若い女性社員に呼び止められる。「先日、打ち合わせしてもらった仕事の件ですが、やはり分からないところがあるんです」と言う。ぼくは広場の方を指差し、「じゃあ、あちらの広場のテーブルでこれから打ち合わせしましょう」と答える。「そうしてもらえると助かります」という彼女と共に広場へ向かうが……

 そこには木製のカウンターがあり、彼女は若い男性の上司とともに向こう側、こちらの椅子にはぼくと妻とが座る。二人が課題として示すコピーに、ぼくは自分なりの解釈を与えていく。彼女はそれでOKのようだったが、上司は「そんなのではダメだ」とヒステリックに否定するので、ぼくらは改めて出直すしかないと思う。

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3月25日の夢(ステーション・ホテル)

 戦後の名古屋駅コンコースの雑踏の中を歩いている。左の壁のくぼんだ場所に小さなカウンターがあって、そこがステーション・ホテルのフロントだ。チェックインしようとすると、カウンターの前にいくつか並べられた椅子の一つにSが座っている。Sはぼくの後輩だが、いったんは社長にまで昇りつめたものの人望を欠き、最後は会社から追放されて、癌を患い、故郷に帰ったと思っていた。生きていたのか。よく見ると、顔色が蒼白である。ぼくはとりあえず「元気だったか?」と声をかける。彼は曖昧に頷き、「勤めていた大学が……」と言う。「へえ、大学の教員になったんだ」と話を合わせるうち、彼はいつのまにか大学時代の友人のKに変わっている。名刺を渡そうかと思うが、そういえばちょうど名刺を切らしていたところだった。名刺がわりに最近解説を書いたTの全詩集を渡そうか。いやいや、それはあまりに高額過ぎる。そんなことを考えているが、それにしてもルーム・キイをなかなか渡してもらえない。そのかわりに何かよく分からないものが、カウンターに投げるようにして置かれた。ふと見ると、かたわらの床に一目で田舎から出てきたおばあさんとわかる二人の女性が疲れたように座り込んでいる。やはり鍵をもらえないらしい。

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3月23日の夢(ベランダの老人)

 妻と二人、タクシーでホールに乗り付ける。運転手はぼくの顔を覚えていて、「ちょっとの間に随分やせましたね」(もしかしたら「随分太りましたね」だったかもしれない)と声をかけてくる。

 ホールの階段を昇り、三階あたりのドアを開けると、空中庭園のようなベランダに出る。椅子が並べられた一角に一台のベッドが置かれていて、少しぼけているらしい白髪の老人が寝ている。しばらく観察したが、ぼくらに危害を加えそうな様子はないので、ぼくらは椅子に座り、お弁当を食べることにする。

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3月20日の夢(黒い扉)

 植込みの緑が豊かな公園の一番奥に、古い公民館のような建物がある。妻と二人、そこに入ろうとするが黒い鉄の両開きの扉が閉ざされている。引き開けるとロビーの左手に掲示板があり、来週開催されるらしい短歌か何かの研究会の手書きポスターが貼られているのが見える。だが扉から手を離すと、それは自動的に閉まってガチャーンと大きな音を立てる。何度か扉を開けたり閉めたりしていると、公園の方から近づいてきた女性が「来週ですよ」と声をかけてくる。ぼくたちは建物に入ろうとしただけで、研究会に関心はなかったが、女性はそれに参加したいのだとぼくらを見なした様子だ。「でもその会で合評しようとした作品の作者が、自分だけでなくグループ全員を合評してくれと聞かないんです」と女性が妻に説明している間に、別の男がぼくに近寄ってきて、手に持ったゴムひものようなものでネズミの形を作ってみせる。ぼくは驚いて「うわあ、お上手ですね。まるで〇〇みたいだ」と言おうとするが、〇〇に当たる比喩を思いつけず、迷っているうちに目が覚めた。

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2月9日の夢(東京のない世界地図)

 出張から会社に戻ろうとする途中、同僚二人とばったり会い、彼らについて行く。そこは誰でも使える貸事務所のような場所で、広い室内に楕円形のテーブルがいくつも置かれており、ごったがえしている。テーブルはパーテーションで仕切られ、仕切りごとに2~3脚の椅子が置いてある。同僚たちが座った仕切りには2脚しかなかったが、強引に近くの椅子を引き寄せ、三人で座った。

 ここでぼくらの会社で制作している新しい巨大な世界地図の校正をするのだ。大陸の地形は昔通りだが、知っている国名はほとんどなく、全く見知らない世界に変貌している。日本列島に目を向けると、東京すら存在しない。とりあえず地名を素読みしていくが、それが正しい表記かどうかも分からない。

 終わって引き上げようとして鏡を見ると、ぼくの額に赤紫の大きな痣ができている。旧ソ連のゴルバチョフ大統領の痣にそっくりだ。皮膚科の医者に行こうと、JRの駅に行く。そこはまるで戦後の駅のようで、電車はすし詰め状態。ドアが閉まりかかるのをなんとか突破して乗り込む。降車して駅のガードをくぐるが人けのないトンネルを抜けた先に皮膚科の医院はない。

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1月26日の夢(会議室)

 会社で自分のパソコンが不調なので、欠勤中の女性社員のパソコンを借りて仕事していると、「早く並んでください」という声がする。

 某大企業のクライアントたちが何人も会議室に来ていて、大きな仕事を任せるにあたって、ぼくの会社の全社員面談を行うという。入り口で順番を待っていると「二階へあがれ」と声がした。また階段を昇り、別の会議室に移動する。

 順番を待つ行列の一番目はKくんで、ぼくは二番目だ。二人は会議室の中を覗き込むようにして、中の様子に聞き耳を立てる。ちょうど一人の面談が終わった。クライアントたちはしばらく協議に移る。彼らの会話が漏れ聞こえてくる。「今度の仕事は詩人の黒田三郎に関するものなんですよね」「まだここに来ていないけど、一色さんという方がよく知っていると思います」「でも現場が遠隔地だから、無理かもしれないですね」…… ぼくのような高齢社員にはもう仕事は入らないだろうと思っていたので、ぼくは彼らの話に心底驚いてしまう。なんだか左足が半分麻痺しているようにも感じる。そこではっと気づいて後ろを振り返る。会議室の内部を立って聞き耳を立てているのは、ぼくとKくんの二人だけで、あとの同僚たちは廊下のベンチに皆、おとなしく一列に座っているのだった。

 協議を終えたクライアントたちは鞄を手に、各自さっさと引き上げていく。どうやら昼食休憩になったらしい。ぼくも自席に帰ろうとするが、階段の途中に誰かが注文したらしい出前のうどんが置かれている。じゃまなので動かそうとすると、ぐらぐらして危なっかしい。器の下に小さな皿が置かれているので、かえって不安定なのだ。出前の盆は持ちやすいよう、下に皿が置かれているが、床に置くとかえって不安定になるのだなと思う。

 オフィスに戻る。三列にデスクが並んでいる。二列目の真ん中が社長のU氏のデスクだ。ほかの社員のそれと全く見分けがつかない。「社長なんだから、もっとちゃんとしたところに大きなデスクを構えればいいのにね」と同僚に話す。

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1月25日の夢(欠落した階段)

 駅のホームから階段を昇って会社に戻ろうとすると、途中で三段の欠落があって、それ以上昇れない。工事の人に尋ねると、「上へ行く階段は今すべてこうなっています。でも使っていただいても構いませんよ」という。もう一度昇ろうとするが、やはり欠落した三段の幅は足が届かないから、無理である。「これじゃ昇れないです。それに階段の上の事務所で働いている同僚たちは皆これを知りません。昇るも降るもできないじゃないですか。一体工事はいつまでかかるんですか」と抗議すると、「6日から2週間ぐらいかな」と答える。「えーっ、その間、上に閉じ込められた人たちはどうするんだ?」とびっくりする。

 クライアントの男性と地方に出張することになる。工事の影響でお弁当が用意できない。途中の駅のホームは無人だが、先端にある石のベンチにお弁当がわりのプラスティックトレイが二つ並んでいる。トレイの中身はナポリタンだが、パスタが縦に一本ずつきちんと並べられている。ぼくとクライアントはそれを一本ずつお箸でつまんではベンチに並べる。これはクライアントが用意してくれたんだろうか。それともぼくが自分で用意したものだったか。

 夜の闇に沈んだ川面に機械のようなものが見える。それを見てクライアントは「ああ、あれがそうですね」と言う。ぼくは「違いますよ」と否定する。「昔、オイルショックのあと、物が皆なくなって、コーヒーとかもすごくまずくなったことがあったでしょう?」 すると「ああ、そんなことがあった、あった」と彼は言う。「ええっ? この人、そんな頃にもう生まれていたんだっけ」と、若いはずのクライアントの顔を改めてしげしげ眺める。

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