3月15日の夢(宇宙船)

 ぼくらは遠い星系に向かって航行中の巨大宇宙船に乗っている。その宇宙船が故障し、このままでは爆発すると分かった。乗船する全員に退船命令が出された。といって、深宇宙を長期にわたって航行する宇宙船はほとんどミニ地球と言っていいほどの巨大さだ。退船すると言っても、容易ではない。
 続々と船から降りる人々に逆流するようにして、1人の女がタラップを駆け上がった。「その女はテロリストだ。そいつを掴まえろ!」 ぼくは叫びながら女を追いかけるが、退避する人々はぼくらに目もくれない。女を追って、ぼくはどんどん宇宙船の深部へと引き込まれていく。
 通路が直角に左折する曲がり角に、三角形の部屋がある。保安室だ。構わず通り過ぎようかどうしようかと逡巡する。その瞬間、斜めについたドアがあき、白人の中年保安官が出てきて、ぼくを誰何する。しかたなく、ぼくは追跡をあきらめて、自分の身分を説明する。
 とうとう宇宙船の一番奥の居住区に入った。中にはアメリカの西海岸を思わせる世界が広がり、青空に白い雲がたなびいている。しかし、その空が偽物であるのは、青空の二か所で塗装や破損を修復する工事が行われていることで分かる。深宇宙を行く宇宙船の内部にいても、まるで地上にいるように感じられるよう、環境整備がされているのだ。
 引き返す途中の部屋に、三人の男がいる。ぼくは男たちに「明日、この船は爆発する」と言い、退避を勧めるが、男たちは暗い顔で押し黙ったまま腰を上げようとしない。船と運命を共にする気なのだ。ぼくは感情がこみ上げてきて、号泣する。泣いて泣いて、涙が涸れつくすと、ぼくは散らばったカバンや服をひろって身につける。そして無言のまま、宇宙船を退船するため、エアロックへと向かう。

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