サバイバルする二つの夢

 大きな別荘のような建物に会社の同僚たちと泊まっている。花火を見てみんなで喜んで騒いでいると、反対側の空がにわかに怪しくなり、大嵐が押し寄せてくる。床に伏せたり、壁に隠れたり、みんな精一杯身を隠したのだが、あっという間に壊滅的な被害に遭い、ほとんどの人が死んでしまった。ぼくは辛うじて生き残り、呆然としていると、玄関に黒塗りの乗用車が横付けし、目つきの悪い男たちが降りてきて、ぼくに「車に乗れ」と言う。「生き残った人に証言してもらい、記録に残さなければいけないから」と言う。
 車は坂を下りていき、街の中に入る。そこには露天に横に長いテーブルがしつらえられてあり、すべての席に役場にあるような三角の名札が立てられている。ぼくの名札もある。既に多くの男女が席についていて、談笑している。この名札のある人は生き残った人たちなのだと思い、ぼくは自分の知人がいないかと必死で名札を見ていく。しかし、ぼくが知っている名前はたった一つだけだった。それは長老詩人のA氏の名前だったが、本人はまだ到着していない。ほかに知人の生存者はいないらしい。
 親指ぐらいの小型のワニを畳の上で飼っている。いたずらにワニの口に耳掻きを突っ込むと、怒ってワニは耳掻きに食いつき、竹製の頭の部分がパリンという音と共に砕け散った。小さなワニだからと多寡をくくっていたが、怒ってぼくに食いつこうとするので、大判の写真集(ロシアのピアノの巨匠リヒテルの写真集)をワニに何度も叩き付ける。さすがのワニも白い体液を腹から出してぐったりしてしまった。しかし、高価な写真集がワニのはらわたで汚れてしまったなあとがっかりして、それに気をとられているうちに、ワニはまた元気を取り戻し、ぼくに食いつこうとする。不意をくらったぼくは何かにすがりついて、床から両足を離し、空中に逃れようとするが、ワニは執拗に30センチも空中に跳び上がっては、ぼくに食いつこうとする。写真集も手放してしまったし、ぼくはワニと闘うすべがなくなってしまった。

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