灯す

灯す
月が空にひとつぽつんとしかない嫉妬に
青い火ひとつ
潮が渦を巻くくらいの感情の高浪に
赤い火ひとつ
四葉のクローバーを見つけても
三葉にしてしまう天の邪鬼に
緑の火ひとつ
生きているのは
何処かに産み捨てた人いる十字架に
金の火ひとつ
誰しもそれぞれが背負う
街並みの灯りと路地裏の陰
歩いてゆく
歩いてゆく
ひとりにひとつづつ
呪い
ひとりにひとつづつ
故郷
泣いてしまえ
スマートなスーツも
ブランドのストッキングも脱ぎ散らして
ひとりに一箱つづつ
分け与えられた
マッチの火を
今夜だけ点けながら
マッチ箱が
空になるまで
コトバを交わす

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惜春

惜春
シーツの海に住み着いた赤い蝶が
羽化したサナギを嘲笑い
自由に飛んでいく頃
海辺で泣いていたのは
溺れた人魚
帰れないお伽噺に
還りたい
アスファルトにアカイハナ
が咲くと
潮風の匂いが異国の涙を
誘うだろう
アカイハナに赤い蝶
潮騒には裸脚
同じゆらめきの果てに
楽園と廃園の鍵は
差し込まれて
血を流しながら闊歩する女の
渦を巻く激しさに染まる街
たまゆらの音色に委ねた
ピアノの旋律のさざ波
ゆれる
ゆれる
ゆすられる
楽園は近々廃園に
戻ることを
知るだろう

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監禁

監禁
誘っても 拒む少女の 夏のドア 開け放ったまま 消える足跡
うたいだし 「ここにおいでよ」 の優しさが いつの間にか 身を裂く稲妻
夕立にうたれて 二人滑らせる 汗と蜜と甘い舌
屋敷には 黒い部屋に 君は明日 手錠をされて 啼いて悦ぶ
叫んでも すがってみても 僕はまだ 赦さないよ 赦さないよ
君の汗 君の涙を吸った 部屋 君はまたくる 嵐の夜に
呼んでるよ 君の味見を知る畳 自ら曝せ 珠露の肌
自ずから 君が抱かれた その屋敷 私は名付けた 君の鳥籠

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瑠璃色の彼方に

瑠璃色の彼方に
瑠璃色の彼方に
僕が覗きこんだ世界は
モノクロに覆われて
大地は眠りにつこうと
終演の幕を下ろし始めた
飛び出した頭の高さだけ
ぶきっちょな僕は
シナリオにない演出を
西の空に描きながら
見果てぬ夢物語を
水彩色鉛筆を使って
涙で滲ませた

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クロスロード

クロスロード
頬に涙を流し
缶ビール二杯じゃ酔えない
恋にこだわり続けました
骨になってゆく
僕らの想い出は美しいまま
明日の廃品回収のゴミ袋に
捨てられます
貴女にはしたいことが
塵のようにつもり
僕はやりたいことを
シュレッダーにはかけれない
色褪せた明日は
透明な未来に続くのでしょうか
光射す窓辺
白いカーテンの朝の熱風
朝顔柄の紺の浴衣に
お水をこくりと飲み干す
貴女の喉越しに
僕は何味でしがみついているのですか
きっちり髪を切ったはずなのに
「貴女の為に生きたい」

そんな黒髪の子供が駄駄をこねた言葉を
撫でながら
また
未来像に缶ビール二杯で
酔える夢を
貴女の頭のつむじ風が
教えてくれそうです
今度のクロスロードで
お互い独り歩きをしていたなら
さよならのない
一本道に二人の影をおとしてみませんか
決して冷めない
缶ビール二杯で
酔える
恋と夢と
語り継がれるような
お伽噺を

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アカイナミダ

アカイナミダ
虚ろな目 濡れた指しか欲しがらない お前を正気に狂わせたくて
足の爪 紅に染め上げ 去る貴女 僕の心もお願い赤に
探してる 君の涙の処方箋 薬局に 愛は売ってなくて
哀しくてやりきれないのに笑う癖 治らないまま付き合う貴女
泣いてみて 泣いて見せてよ強がらず 裸のままで泣こう僕たち
いいこだね ホントにいいこ 私の子 いいこでいるから 僕を抱いてよ
独り泣く お前の影に手を伸ばし 抱きすくめたい 刺さった棘ごと

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晩夏と晩歌

晩夏と挽歌
診断書 狂い死にを並べられ 「手帳」に文字を 殺 殺 殺 と
ヨレヨレの布鞄にしがみつく 私の生と赤い御守り
夏の歌 詠えぬままに瞼閉じ 午後二時に来る 凍える魔夏
証をね 遺すの証 遺すから 最後の仕事 血塗られた詩画集
さようなら 私もうじき書けなくなるの 詩も絵も歌も 生命線も
ありがとう って言いたい人 たくさんで 涙の記憶 忘却の海へ
空高く 夏 何気無い顔をして 命一つを 彼岸に運ぶ
今ならば 詠えるのかな 私にも 透き通る骨 魚の挽歌

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調べなさい

調べなさい
貴方が初めて私に手渡したのは
赤い花でした
私が最後に手渡したのは
青い花でした
もし貴方が
雛罌粟畑で
赤薔薇を一本捧げてくれていたなら
夜には月花美人が咲いたでしょう
貴方は溝に私との時を沈めて
違う花にも赤い花を
添えて量り売りをしたのてす
あぁ
だから私はこの夜の果てまで行って
採ってきたのです
青い森の青い花(バラ)
私も調べます
貴方が私にくれた赤い花の代償金
生産地とルーツ
かかった印税と重さ
だから貴方も
調べなさい
青薔薇の秘密
今年二回もブルームーンがあった理由(わけ)
そして貴方は
知るのです
私が貴方に
青い花(バラ)を
渡さなければならなかった
無数の痛みたちを

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七夕と恋

七夕と恋
天の川 涙で溢す 嘘一つ
織姫や 失恋二つ 織り成して
より多く 愛した罰の 天の川
流しても 沈む笹舟 泥の船
願のない 私を笑え 短冊よ
哀しみを 運べ笹舟 銀河まで
笹の葉に 金銀揺れる 恋心
世の恋を 全て叶えて 七夕夜

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千年の樹影

千年の樹影
千年の樹影
祠に眠る千年皇女
逃れ 逃れて荒御霊
道連れにした偽比女と共に
哀しみを夏の影に宿して
この社に埋葬された
社の神は男神
比女の眠りを誘い
荒神の腕に抱かれ
魂は静寂の星になる
古の御霊鎮めに
千年杉を植え
古刹に濡れた
石板の赤い名に瞼閉じては
私は 思い出ごと
一枚の絵に
すべての歴史を
閉じ込めた

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