微睡みの街

今年という文字で
締めくくられる 空を
太陽が仄かな焼け跡をひきずり
金星に輝きを明け渡す頃
ポツン、ポツン、と灯る
薄明かりの外灯が
三角錐に映し出す田舎道
老いた母と年の暮れの真ん中を歩くと
海参だしの年越しそばの 臭いを纏う
高速バスの窓から見えた
振り回され 飛ばされる
風景のような年を いつのまにか
私たちは降車し
町内の明かりの優しさに
身を寄せ合える人々の束の間を
ゆっくりと歩む
昼間食べた年越しそばを 
今 食べている人を思いながら
食卓にある 鯖の味噌感を開けると
今年という過去の始発が
この缶詰だけであった人々の寒さに
身を ブルッと震わせてしまう
だから、こそ、なのか、
石油ストーブのヤカンが
警笛を鳴らし終えた今
「今年」に思いを馳せる 全ての私たちが
ひと時の安らぎを求めて
深呼吸とともに 
しばし一番星の夢を見ることを
来るべき未来に 手渡したい

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