地方の街に新しく大きな劇場ができたというので取材に行く。ホワイエがロココ調で純白の配色。美しいだけでなく、驚くほどの広さだ。ベッドのようなソファーが何台も置かれており、観客は寝転がってくつろぐことができる。集まった人たちの中に懐かしい顔があった。会社で同僚だったグラフィックデザイナーのSくんだ。「一度タイムレコーダーを押してから来たの?」と尋ねると「そうだよ」と言う。勤めを終えてから来たのか。ぼくは直行で来たのに、あいかわらず真面目だなと感心する。
見て回るうち、トイレはどこにあるのだろう?と気になりだす。ふと見上げると、通路の壁の高いところに木製のドアがいくつも並んでおり、そこがトイレだと気が付く。斜めにつけられた階段を登り、無理な態勢でよじのぼるように個室に入る。ここでは食事をすることもでき、オーダーをするとウェイターが届けてくれるのだ。ウェイターは「こんなものおいしくないですよ」と言いながらも、巨大なトレー二枚を思いきり反動をつけて部屋に寄越してくる。しかし食べてみると、卵チャーハンもケーキもとてもおいしい。