ぼくの勤めている会社の取引先の銀行で事件が起きた。ぼくはまだ新入社員だが応援要員として駆け付ける。とりあえず用はないので、他の若手社員とともにロビーでにこやかに立っている。自分では組織の一員として役立っているつもりだったが、銀行の役員がやってきて、ぼくに厳しい顔つきで宣告する。「あなたは裸足でおまけに足が臭い。カバンに入れている弁当が臭うのも問題だ。ここにいてほしくないので、すぐに立ち去りなさい」。確かにぼくは靴下をはいていないし、母親の作ってくれた弁当箱を持っている。「わかりました」と素直にロビーを出る。
外は雨が降っている。空腹感を覚え、隣のデパートに入る。二階のフロア全体が大きなパン屋である。だがぼくはトレイではなく、小さな皿に自分の食べたいパンを山のように積み上げる。手で押さえないとこぼれてしまいそうだが、なんとか出口までたどりつく。だがそこにレジはなく、隣のフロアで自由に食べてよいらしい。