緑鮮やかな運動公園でリーディングのコンサートが開かれている。観客席に円形に囲まれたステージではRさんがテクノミュージックを演奏中だ。次の出演者は彼女の夫のNくん。彼は朗読をしながら舞台狭しと歩き回り、最後に聴衆に「果たしてぼくの詩の声は届くのだろうか」と叫ぶ。広い観客席に聴衆はぱらぱらとしかいないが、それでもNくんを応援する盛大な拍手が巻き起こる。
彼は殆ど裸の相撲取りのような恰好のまま、ぼくのところへやってくる。ぼくは小声で「きみの正体をカミングアウトしていいのか」と尋ねる。彼が「大丈夫なことであれば」と言うので、ぼくはマイクを握り、「実はこの人は国会議員です。こんな議員がいらっしゃるのだと思うと、ぼくは泣いてしまう」と聴衆に訴える。そして実際に感極まって泣き出す。