11月21日の夢(デパート)

 渋谷の街を見下ろす高台に木造3階建ての巨大な廃墟があり、敗れた障子などが壁にぱたぱたとはためいている。地面は舗装されておらず、砂埃が舞い立っている。ここは渋谷のデパート王といわれた創業者が家族と共に住み、その令嬢が窓からいつも父親のデパートを見下ろしていたエピソードで有名な邸だ。しかし、一家は遠い昔にここを引き払い、今は僅かな観光客が訪ねてくるだけの場所である。
 そのデパートはエレベーターでなく、フロアの端にある階段を昇り、反対側の階段まで歩いて、また上の階に昇ると、他のデパートにないユニークな店づくりが見えてくるのだという。階段を探すと、薄暗く置き忘れられたようなところに上り口がある。昇ってみると、旅行代理店ばかりあるフロアとか、各階ごとにデパートとは思えないテナントが入っていて、面白い。すべての階を探検してから屋上に昇る。
 屋上は四方の壁に大木の切り株があったり、削られた丘の断面が見えたりする。このデパートは自然の丘を利用して、それを刳り貫いて作られたものだったのだ。屋上には渋谷の街の太古の姿がそのまま残っているのだった。

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