7月30日の夢(バッチギ)

 どうも「パッチギ」のような映画に、ぼくは出演しているらしい。「暴動だ!」という叫びと共に、右手の路地の見えない奥から、バンバン!という激しい破裂音がして、左の方に何かが次々と投げつけられる。四つ角のところに、縁台のようなものがあって、日本人の薄汚い男たちが何人か寝転がっていたが、みんな呆然と身をすくめている。怖ろしくて動くことができないのだ。
 朝鮮人街の安ホテルの中。入り口はガラスの引き戸だが、なぜかテーブルを並べてバリケードのようにしている。ぼくはホテルの内部のベッドに寝転がっている。男性詩人のHくんがいて、ぼくに「今日もホテルのご研究ですね」と声をかけてくる。そう。ぼくはホテルの研究と称して、ここに入り浸っているのだ。ホテルの中にはBGMとしてベートーヴェンのピアノ協奏曲が流れている。
 突如、ホテルの中に緊張感が走る。ガラス戸から見える表通りを松井秀喜が歩いている。しかも、ホテルの中に入ろうとしている。みんな慌ててバリケードを撤去して、彼を通す。だが、入ってきたのは、松井に似てはいるがぐっと無骨な「松井のニセモノ」だった。こわいヤーさん系のおじさんや、やさぐれたおばさんも一緒だ。そのおばさんがぼくに名刺を渡す。名刺は半透明のトレーシングペーパーのようなものを、病院の薬局で出される薬のように縦に長くつないだもので、その端をぼくに握らせ、引っ張ると長い帯のようなものになる。歯科医と称する軽薄そうな男もいて、彼はお盆の上にたくさん盛られた粉薬をセロテープでくっつけ、それをぼくの歯に当てる。ぼくにももう一枚セロテープを取って、同じようにもう一度真似をさせる。そうすることで虫歯の検査ができるのだという。どうやら、虫歯があったらしい。彼は「はい。ありますね」と言って、今度は治療薬の粉を同じようにセロテープで取って、歯に当てるように指示する。そして、歯の治療をするつもりなのか、部屋の奥の様子を伺う。その方向は暗闇で、よく見えないが、きっと虫歯の治療台があるのだろう。
 パーティが終わったあと、ぼくは長くて使いにくいホースの電気掃除機で床の上にたまったゴミを次々と吸引していく。みんなは他の部屋の掃除をしていて、この部屋の掃除をしているのはぼくだけだ。

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