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2006年06月28日

ヨコハマメリー

見たい見たいと思っていた映画「ヨコハマメリー」を昨日やっと見ることができた。ようやっと映画館も空いてきている。映画を見るってほんとに気持ちの余裕が必要だ(少なくとも私の場合)。

私もメリーさんとは2、3回伊勢佐木町やJRのなかですれ違ったことがある。そのたび白昼夢を見ているような不思議な気分になった。松坂屋デパート、馬車道、伊勢佐木の通り。そこに重なるように占領下の、今はない根岸家の情景の再現。猥雑で活気に満ちた街頭の人々のかもし出す熱気。
そして一度だけきいたことのある永登元次郎さんの熱唱する「マイウェイ」には涙が滲む。今はその彼もメリーさんもいなくなってしまった街。最後のシーンで松坂屋の前を忙しげに歩くひとびとの間を幻のように過ぎていくメリーさんの姿は妖精のようで、悲しい。戦後から街娼として、年老いても街に立ち続けたメリーさん。忘れることのできない時代の証人である。それにしても年老いた彼女の素顔の凛とした美しさに驚く。あれは一体どういうことか。プライドを貫いたひとりの女性はあまりに寡黙だった。

やがてメリーさんも都市の伝説として語り継がれることになるだろう。無数の顔のないひとびとのシンボルとして。私たちはいまその伝説の生々しい息吹に触れているのだ。

多くのドラマを孕んだヨコハマという庶民の街。あらためてその懐の広い活力を感じる。私はたかだか20年ほどしか住んでいないけれど、居住者にとっても、横浜は日常と非日常の二重性を抱えた魅力ある街だ。

帰りに映画館の売店でサウンドトラック「伊勢佐木町ブルース]のCDを買う。

投稿者 ruri : 2006年06月28日 10:56

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コメント

「ヨコハマメリー」の映画は福岡では7月29日からです。

パンフレットの中のメリーさんは白塗りで化粧も濃く、舞踏家のイメージを持ちました。

予告編は見ましたが、メリーさんは様々な方々に見守られていたんだなと感じました。

しみじみと見てみたい映画です。

7月29日は「ゲド戦記」も封切られるので、ものすごく楽しみです。

すごい特別な1日になりそうです。

「ゲド戦記」の主題歌(一羽の鷹の孤独を歌った曲・歌詞も悲しくいとおしく、とてもよい)歌っている女の子の声が「今までにこんな素晴らしい声を聞いたことがない」と、うなってしまうほど素晴らしいのです。

1つの声に様々な要素が含まれていて、歌っているのは1人でも、まるで3人〜4人の人が歌っているような自然な技術と可憐さ(天性のものか?)があります。

声の終わりの引き方(伸ばし方)が静かで様々な情感に満ちています。

歌手の名前をど忘れしましたので後ほど。

投稿者 獅子童丸 : 2006年07月01日 21:52

コメント有難うございます。

ゲド戦記については、かつて詩と思想に書いたし、ル・グゥインにとても興味があるので是非みたいです。その詩は(言葉は沈黙に…)というのではじまるあの詩かしら。とにかくきけば分かりますよね。楽しみです。

                

投稿者 ruri : 2006年07月02日 12:02

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