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2007年04月26日

異邦人たちのパリ

 詩が書けないのに(書けないから?)、新国立美術館の「異邦人たちのパリ」展を見に行った。今日はミロの「絵画」という作品の前で思わず立ち止まってしまった。いま与えられている詩のテーマとつながっているので、刺激を受けたのだ。夢や無意識の表現ということではミロの作品は示唆的なものだった。その他ではパスキンの人物画がおもしろく、ジャコメッティの意外性のある彫刻作品にも出会えた。これらはポンピドーセンター所蔵作品なのだが、かつてパリで見た筈の作品も初めてのような気がして、まじまじと見ることになった。
 それにしても私は現代の美術作品のほとんどに、観念的なアイデアや仕掛けをまず意識する羽目になり、脳の中の出来事として納得してしまう傾向があり、これはやっぱり自分が美術の現場にわが身を置いてない故かと思ったりした。現代詩もそうだが、現代芸術が一般性を得ることの困難さは共通しているのだろう。直接的な身体性というものが追放されていって…、だが同時に、そこに別次元の興味を感じる自分もいるということなのだけど。

投稿者 ruri : 21:46 | コメント (2)

2007年04月25日

「不思議動物園」

 4月20日、作曲家の堤政雄さんの「不思議動物園」というコンサートにいった。堤さんは現代音楽を中心に、歌曲やシャンソンなども、広いジャンルでの音楽活動を続けておられる。私は以前から、子どものためのミュージカル「海のサーカス」の台本や、シャンソン「かもめの島」「サビという馬」や、CD−ROM詩集「 うさぎじるしの夜」などでも、いっしょに楽しい仕事をさせていただいた。その日の会場はルーテル市谷センターで、静謐さと気品の漂う会場だった。
 当日は現代音楽の作品をいくつか聴くことができ、また歌曲では「ペッパーランド」誌に載せた私の詩『かぜひきみのむし』(堤政雄作曲)のようなユーモアあふれる曲のほか、おもしろい歌詞の曲などもいくつか演奏され、なかなか変化に富むコンサートだった。このコンサートのおかげで、私はとかく敬遠しがちだった現代音楽への関心を呼び覚まされた。またどこかユーモアあふれる堤さんのトークに会場からは、しばしば笑い声も起こった。
 彼は以前から妖怪という存在が好きだったようで、いくつもの曲が、時にザワザワした妖しい空気を孕んでいて、もしかしたら背中合わせで異界に触れていたのかもしれない。とにかく私はその日、音楽の力…としかいいようのないものを肌身に感じ、同時に友人である彼がそのようないい仕事をしておられることに、なんともいえない嬉しさと励ましを感じたのだった。

 ここに、ちらしにあった彼自身の紹介文を引用させていただく。
《ここ数年来、私は埼玉県奥武蔵の山里に住み、わずかばかりの畑で野菜を作りそして日々作曲にいそしむ生活を送っています。自然の静けさのなかでは、風のささやき、木の葉の調べ、鳥の歌声などと共に、けもの、妖怪など有形無形の気配が交錯します。それらは豊かなインスピレーションを私にもたらしてくれます。
 そのようにして生まれてくる作品の中から、今回は主にいわゆる現代音楽の技法、諧謔と異形のイメージそして叙情への回帰という三つの性格を持つ曲を選びお送りします。 》


                     
             かぜひきみのむし  詩:水野るり子、  曲:堤政雄


              みのむし みのきて ゆられていたら

              風にふかれて はなかぜひいて

              あまいあめだま なめたってさ


              みのむし みのきて 夢みていたら

              風にふかれて 小枝に 打たれ

              せなかほつれて すきまかぜ


              みのむし しぶしぶ みのぬぎすてて

              くぬぎ林を お散歩したら 

              はっ はっ はくしょん はっくしょん


              みのむし はやあし もどってみたら

              風にゆらゆら 一張羅のわが家

              おおきなおとこが 高いびき


 

 


 

投稿者 ruri : 13:43 | コメント (0)