永遠の少年

永遠の少年

あなたを失ったら
自殺するといった
永遠の少年
僕には障害があるけど
あなたを全力で愛する
と泣きながら
叫んだ
いつかの少年
もう おじさんレベルなのに
首の曲がった女なんかの
どこがいいの
見上げれば
嵐のあとには
真っ赤な夕焼け
散歩途中で躓いた
老犬
そういえば
お前も子犬の頃から
私に
捨てられないと
信じて余命を生きる
永遠の少年だったね
今も
あの澄んだ目で
私を見つめながら
泣いているのか
夕日を雲が隠して
今は
愛することの
意味すら
わからないままに
永遠の
向こう側にいった
いつかの少年
老犬が
じっと私を
見つめている

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生きる

生きる

何もかもが嫌になってさっき睡眠薬を多量に飲んだ
私は健常者ではない。一生手立てのないある疾患を持っていた。
父はいない。母は仕事。娘が死のうとするその瞬間さえも仕事。
毎日息をするのも辛い。無理して笑ってみても変な顔
人は病人の気持ちなんて分からない。
頑張れないときに頑張れと、励ます友人の心強さが恨めしかった。
私は目前の池に目を向ける。
ゆっくり入水自殺する。一挙手一投足が自殺。
私は狂っている。私はいらない子。私は誰からも愛されない。
沈んでゆく私の手のひらに猫じゃらし。
最期の草。もう晩秋。
私と同じように朽ちてゆくのか。
ねえ、これが最期。最期だけ良いことをしよう。
引っ張らないでいてあげる。
そうしたら、お前はその体に撓わな種をつけ
来年の春にはお前の分身を生み、春の陽気に微睡み
夏の陽差しを乗り越え、また来年の今頃には
一生懸命に生きて新しい自分の分身を生み出す。
それが、自然の理。
あぁ、今、わかった。
私に足りなかったものはそうゆうものなのだ .
誰かに褒めてもらおうとか
誰かに愛されたいとか
という孤独な虚栄心
ただそこにあるだけで
必要とされる生きているものの温かさ。
そういうものに生まれ変われるなら
私は心の底から「生きたい」と願うのだ。

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オフィーリア

オフィーリア
オフィーリア

オフィーリアよ
お前のその祈りは
誰のためなのか
恋するが故に
狂気を纏い
死して尚
その紅き唇から
なにを語るのか
オフィーリアよ
渦巻く策謀の罠に
堕ちた
儚き夢を渡る少女よ
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常春

常春
身体じゅうの痣から
透明な茎がでて
病室で溜め息を吐く度
花が咲く
プランタンの菫が
赤や紫や黄色になって
身体じゅうに咲く
痛くはない
辛くはない
ただ頭に
花が咲いたら
春がきたとおもいなさい
此方へは
還ってこれない
拘束ベッドの
箱庭で
枯れない菫が
植えられてゆく
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ある恋いの形見に

ある恋の形見に
戻れない蜜月を
振り返れば
其処には欠けた三日月
鋭い鎌で胸を刺し続けた僕らの
いつかの夜空の爪痕
今更の今日が
明日を隠すんだ
孤独が約束に
鍵をかけるんだ
満ち足りない日常に
くるまれた新聞紙から
腐った桃から滴り落ちた
水蜜桃の苦さを
僕は知ってるから
違う果実を探しながら
過去を千切りながら歩く
熟れ落ちた林檎を
かじってみても
僕らには
エデンは遠く
君またも遠い
僕は果てしない
夢を見るために
瞼を閉じた
琥珀色の瞳に
君を染まらせないように
そんな色のブランデーの海に
君を酔わせないために
孤独が約束通り過ぎた夜
狡い僕から
風に揺れてる
雛罌粟のような君へ

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ただ君に・・・。

ただ君に・・・。
秒針に胸を刺された夜の華眠れぬ夜に枕を濡らして
いじらしい棘ほど甘い顔はない花のように微笑む嘘つき
秒針の音聞け叩け我が胸の鳴りやまぬ夢の扉を開け
淋しさに唄があるとするならば薄情者が吹くよ口笛
俺の詩は普遍的だという君の普遍性ってなんのメタファー
隠してたでもバレバレの嘘をつく男の言い訳 女の秘密
新しい秘密と陰口増える度 人と人とが夜手を繋ぐ
眠れない夜を数えてモノロクローブー触れる針に揺すれ揺すられ
ただ君に優しくしたいだけなのにコインが裏切る本音の裏側

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黒い箱

黒い箱
黒い箱
長持ちする
飾られた言葉が
優しい配色で
贈られて
私を癒やしては
私の代わりに咲いて
枯れて消えた
せめて
絵にかけば
消えないだろうと
毎日描いて
描き終わった頃
花も枯れて
贈り主も消えた
まるで
始めから予知されたように
黒い箱に
収められていたっけ
私は
水彩画の思い出を引き裂いて
柩に涙を刻む
ラナンキュウスの花束を
勿忘草に替えて
黒い箱に閉じ込めた
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小詩    二編

小詩  二編
【唇】
赤薔薇のように
開いて
赤薔薇のように
咲いて
赤薔薇のように
色づけた
胸に薔薇のような
棘が
刺さったままで

【風の中】
風の中を
旅人は行く
風の音を
纏いながら
淋しそうなフルート
悲壮なヴァイオリン
二短調のピアノ
風の中を旅人は行く
旅は胸に響く
渦巻くうねりの中
すべてのハーモニーを
上手に奏ながら
旅は
続く

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降り積もる雪のように

【降り積もる雪のように】
あなたの望む
あなたにおなりなさい
例えば雪のように
柔らかく白く
降り積もりなさい
やがて踏みにじられ
汚されて逝く
その傷や痛みを
涙や嘘で繕うのです
そうして白い瘡蓋で
覆うのです
人はまるで
降り続ける白い粉雪
自分を掘り下げるように
自分を重ねて行く
   ※抒情文芸134号入選作品 清水 哲雄  選

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斜景

斜景
車椅子は後ろ向きに並び
待合室から掲示板を覗くギョロ目たち
黒鞄の中身は駆け引きと
すれ違う人の胸にはピアスホール
私は泳ぐように歩む
傾いた首で傾いた顔色を伺いながら
俯く病巣の中に
見えない手すりを求めながら
(ジストニアによるケイセイシャケイ。ストレスによるものですね。二年で完治する極稀な人もいますがあなたの場合はおそらく…)
容易く吐露する主治医のサラリーな一声が
耳に残響して早三年
私の見る 人も景色も
斜めに映ったまま陰を沈める
車椅子同士の笑い声に
待合室のいらだち
黒い革靴たちは早歩き
すれ違う人の
異質な私への疑問符は
白いマスクでシャットアウト
私の横目から溢れ出る
情緒不安定な雫たち
斜めに落ちて
いつも 誰かに踏みつけられていく
窓際で
傾いた頬にほおづえついて
睨んだ夕陽さえ
斜めに暮れてゆく

 詩と思想六月号入選作品

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