目覚めゆく魂

敵を射ぬく弓と矢、そして強靭な 弦
それは凛々しく張られた頑なな 強い意思
どんなに強く張られた弦でも 名手にかかれば 引き伸ばされ
心身一体となって 矢を放ち的を射ぬく
人を酔わす バイオリンの弦、ピアノ線、
人の首を瞬時にして 切り落とす弦でも、殺める指先に
奏でられたなら たおやかにしなだれて 至上の愛を奏でるだろう
私をふるわせた男の指が 私のいどを汲みあげて濡らしている
濡れた楽譜から 潮騒が聴こえる
(あの楽譜は なんという協奏曲なのですか
(男と女が笑いながら 殺し合うあの曲は
夜明け前の闇の深さは 男だけの暗黙の了解
その深淵にいて 私を柔らかくするために
あなたは私について語りながら 水を汲み出す音を味わう
強がり続けた私の踵を 足先からあなたは抒情詩でくるみつづける
長い指が弾き出す旋律は 目の前の少女が女の顔に消されて逝く慟哭
私の脳裏に幾つもに亀裂が走り
私の強さをしなやかにしたたかに織り変えていく
あたたかい手つきが奏でたその端が差し込まれると
唇から沁みる 初めての潮の記憶をたどる
ああ
私の部屋で一本の針葉樹が伸びていこうとしている

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。