カラスの行方

東京の地下街から 
胸を焦がすような茜空は売ってませんか
そんなことを言ったら 嗤われるだろうが
本当はみんな 自分の町に住む
夕焼け色の切符を手に入れるために
上京しては 行方不明になったことを
私は 知っている
地下街に網羅する
どの線からも 家に帰れる便利な時代に
年老いた両親を姨捨山に 
沈む夕日ごと おいてきました
多摩川の水に映える 滲んだ空が
橙色の空と雲の輪郭線を 
くっきり仕切って 映してみせる
車窓からは 西日が深く
父母の遺言めいた 眼差しで
私の胸を 斜めに突き刺し追い立てる
見上げると
カラスが一羽 西へ西へと飛んでゆく
森までたどり着けるだろうか
森でも独りで眠れるだろうか
(電車にゆられて どこまでも、どこまでも、、
私は か細い音を連れながら
森へ森へと 消えてゆく

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