向き合う鏡

食器を洗っている時に 現れる私の子供
ご飯を食べたばかりなのに 私を見ながらスプーンを持って
お皿をカチャカチャ鳴らしては はしゃいでいる
私はお前に お匙でご飯を掬ってあげれらないのよ、と
言ってしまえば お前は悲しい顔をして消えていく
私が部屋を片付けていると 散らかす私の子供
お願いだから良い子にしていて、と やさしく諭せば
ちゃんと絵本を一人で読んで きちんと座って待っている
私はお前を産むときに 夢の翼を捥いでしまったのだ
その証拠にお前の背中の二つのでっぱりが
空を飛んでみたいと ふくれている
甘えることを拒絶させてきた 私の胎内の遺伝子意志
強い子におなり、良い子におなり、何かをして見せなさい、
そんな言葉に耐えて来たお前の憤り 背中の二つの哀しいふくらみ
お前の食器を鳴らす音が消えると 私は哀しくなる
お前に絵本すら読んであげられない自分の貧しさを お前に詫びる
お前は誰からも笑われることなく育ち 誰にも笑いかけることができない
立派と呼ばれる大人の振る舞いを覚えては 失くしてゆく夢に追いすがる
 (ヘビが赤い赤い舌をチロチロ出して お前を舐め盗ろうとしている・・・
お前の夢 お前の道 お前の未来
それらを奪ったのは この私です、と 
責める事も責める言葉も教えないまま 大きく育て上げました
 (ヘビは赤い赤い舌であざとく舐める、子供の道は血より紅(くれない)
私が母親の真似事をすると 現れる子供
走り出し転げまわる笑顔や 朗らかな笑い声
私がてしおにかけて殺めてきたものは おそらくそういうお前の姿
 (ソレデモ、オカアアサンガ、ダイスキダヨ、ッテ、イッテ!
天に属する者をヘビの子に変えた呪いが 
私の体を這いずり回り 重く冷たい陰となる
 (ソレデモ、イツカ、ボクヲ・・・・  シテ!
「肉体」という檻の中で 決して笑うことのない私とお前
ミエナイチカラに繋がれたまま 瞬き出来ずに向かい合う

tukiyomi について

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