女の人の持っている鞄が気になってしょうがなかった
遠くへ行けば行くほど 鞄を欲しがる様になっていった
ピンクのショルダー 
黒のハードな合成革に金の鎖のアクセントの物
軽量ダウン地のブラウンのトートバッグに
ストライプは青と白のマリンバッグ
アフタヌーンティーのドッド柄のエコバッグに
果てにはレジャーを模したトレンドリュック
彼女たちを彩る 鞄が気になって仕方がない
ひと夏で 切り捨てられる物もあれば
擦り切れたり千切れたりするまで使う
一生物の 鞄もあっただろう
大切に使われたと 静かに自分の役目を終えることの尊さを
味わえる鞄が ショーウィンドウにいくつあるというのか
期間限定だとか、レアだとか、季節の変わり目に
女心の目に留まるそれぞれの 道標
鞄は 彼女たちと 何処に連れて行かれるんだろう
私は たくさん鞄を買った
そして使わないまま 眺めて満足したら
何処へいったか なくしてしまう
オーダーメイドのものもあれば 友人が作った物もあったし
ウソかホントか ブランドモノもあっただろうが
どれも私の一生を 共に飾ってくれる物ではなかった
私は 服はいらない
私が欲しいのは 裸の赤子が安心して入る鞄
そこでごろごろ眠る私を
一生大切に肩や背中にかけて 運びまわってくれる女(ひと)
今日 真新しい赤い鞄が
青い透明なゴミ袋に入れて捨てられていた
中身を 確かめる勇気はない
「文芸詩誌 狼 24号  掲載作品」

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